思い出すことはつくること

詩人・長田弘さんは、このように言います。

記憶は、過去のものでない。

それは、すでに過ぎ去ったもののことでなく、

むしろ過ぎ去らなかったもののことだ。

とどまるのが記憶であり、

じぶんのうちに確かにとどまって、

じぶんの現在の土壌となってきたものは、記憶だ。

記憶という土の中に種子を播いて、

季節のなかで手をかけてそだてることができなければ、

ことばはなかなか実らない。

じぶんの記憶をよく耕すこと。

その記憶の庭にそだってゆくものが、人生とよばれるものなのだと思う。

やさしく、つつむ。

Embrace the moment.(いまというひとときを大切に)

エリック・カール『ゆめのゆき』。

「やさしく、つつまれる」お話です。

小さな農場でおじいさんは、5匹の動物を飼っていました。
そこで、動物たちに、イチ(One)、ニィ(Two)、サン(Three)、シィ(Four)、ゴー(Five)という名前をつけました。

おじいさんは、毎日、一生懸命、イチ、ニィ、サン、シィ、ゴーの世話をしました。
えさをやり、そうじをして、夕方仕事がぜんぶすむと、 じぶんの家にもどりました。
そして、いちばんお気に入りの椅子にすわって、 あついミントティーをのみ、はちみつをぬったパンをたべました。

じっとする、を学ぶ。

朝露に濡れた艶やかなオリーブの実。

オリーブの木にも、人間とおなじように寿命があります。

樹齢10年から12年で実をつけはじめ、最盛期は20年から40年。
50年を過ぎるとペースが落ち、80年を越えると衰えていきます。

植物の寿命は、四季にあわせて見られる草花から、森の中で何千年もどっしりといきている大樹までさまざまです。
4万年の寿命をもつ植物もあると言われます。

私たち、動物の世界はどうでしょうか。

高木由臣さんは、こう言います。

「寿命という生命現象に関わる法則。その中でいちばん有名なのは、なぜゾウはネズミより長生きかという疑問への答えとして引き合いにだされる「大型動物ほど寿命が長い」という法則だろう。」

「ダメ・ちゃんと・はやく」の代わりに言おう

こどもに向かって言ってはいけない「禁句」の代表。

・ダメでしょ。

・ちゃんとしなさい。

・早くやりなさい。

・なんでできないの?

心のどこかで、じぶん自身に言っていませんか?

ことばは強力な「フレーミング」になります。
フレーミング (framing) とは、フレームをつくること。
絵の額ぶち、めがねのフレームなど、枠をつくり固定するもの。
ものごとの見方や捉え方を決めることを言います。
常識、先入観、固定観念なども、あるフレームによるものです。

私たちは、気づかぬうちに、じぶん自身で使うことばで、世界をフレームしています。
そのいちばん大きな役割を果たすのが、ふだんよく使っていることばです。
声に出さなくても、心の中にあるセリフがフレームをつくっています。

じぶん・じかんプラクティス③(数学からのヒント)

の:ねえ、ドラえもん。数ってどこにあるの?

ド:1、2、3、っていう数のこと?
の:そう。
ド:のびちゃんの頭の中だよ。
の:1時間とか30日とかの数は?
ド:1とか、30という「もの」があるわけじゃないよ。
の:じゃ、何なの?
ド:人間が想像でつくりだす概念。
の:想像なの?
ド:そう。数えるという行為を頭の中で行う、その想像力。
の:じゃあ、頭の中にあるんじゃない?
ド:そう言ってもいいけど。脳も身体の一部で、まわりの世界とやりとりしているわけだから、心の働きが生み出している、といった方がいいと思うな。
の:数えるというのは、心で数えているの?
ド:そうだよ。その力はみんなに備わっている。

ふりかえる力で身になる

What happens if you walk 1000 times?(1000回歩くと何がある?)

母がしばらく前に送ったという郵便が届いた。
(コロナ状況で時間がかかるようだ。中に橙色の小冊子。)

のうぜんかずらがひときわ精彩をはなっていた梅雨明けの日曜日、ある人が訪ねてくる。「凌霄忌りょうしょうき」の冒頭から。

「道を隔てた隣家ののうぜんかずら。鮮やかな橙赤色の花で窓枠がいっぱいになっている。絡みついて登った花が、大きな緑色の樹のいただきから幾本もの蔓を垂らして咲く姿は、まるでオレンジ色の傘のようだ。凌霄花という中国名は、この花が大空に高く登るさまをみて名付けたのではないだろうか。」

Less is more (7) より響かせるには?

ビートルズの曲に『Norwegian Wood』という曲があります。

この曲は、はじめからおわりまで、メロディがふたつしかありません。

メインのメロディが少ないヒット曲はたくさんあります。
でもこの曲は、イントロも、間奏も、エンディングも、はじめからおわりまで、ふたつのシンプルなメロディだけ。
それが交互にくりかえされるのです。

Norwegian Woodは、「ノルウェーの森」ではなく、ノルウェーの家具です。
物語風の歌詞に挿入されたセリフです。

Isn’t it good, Norwegian wood? (ノルウェーの木材よ、素敵でしょ?)

Less is more (6) 望みをつなぐには?

It’s okay.(だいじょうぶ)

このことば以外には、ほとんどセリフがありません。
でも、このひとことが意味深いのです。

『Arctic』という映画。
絶望の際で、生きる望みをつなぐ話です。

北極地帯に不時着したパイロット、オボァガードは、極寒の地にひとり残されました。
ある日、救助に現れたヘリコプターも、強風のため、目の前で墜落してしまいます。
命をとりとめた瀕死の女性を介抱しながら、オボァガードは助かる方法を模索します。

贈ることのありがたさ

オー・ヘンリーの短編小説に『賢人の贈り物』という作品があります。

あるクリスマス。
夫のジムは、妻のデラにベッコウの櫛をプレゼントします。
デラのために、懐中時計を質に入れて買ったのです。

デラも、ジムにプレゼントを用意していました。
それはジムが大切にしている時計につける鎖でした。
それを買うために、じぶんの長い髪の毛を売ってしまいました。

オー・ヘンリーは、最後をこのように結びます。

「すべての贈りものの中で、このふたりやりとりこそ、もっともwise(かしこい)。彼らは、東方の三賢人のように賢い。」

Less is more (5) 平易なことばの表現力

ランドール・マンローさんの『Thing Explainer』は、複雑なものやしくみを平易なことばで書いた絵本です。

専門用語を使わないというだけではなく、1000語で的確に説明しています。

英語に限らず、どの言語も何万という語いがあります。
日常生活では、平均すると2000語ぐらいを使用しています。
1000語もあれば9割近くのことをカバーしていると言われます。英語も日本語も状況はおなじです。

ただ、図鑑のように物事を的確に説明するとなると、どうしてもことばが足らなくなるでしょう。
マンローさんは、説明できるために必要な1000語を選びました。(注1)
この1000語にはマンローさんの創意工夫があります。

Less is more.

つかうことばを制約することで、余計なことばを増やすずにすみます。
小さなこどもでも複雑なしくみをひとりで学ぶことができます。