Empathemian 『ギンモクセイ』台北

ある禅寺にて。

「これは、ギンモクセイね。」誰かの声がした。中学時代の秋の夕暮れ、通学路で通り抜けていた公園を彷彿とさせる。
よく似た、濃密な匂い、芳醇な香りがあたり一面に充満している。小さな白い花びらに手を差しのべて、そっと触れてみる。ふと、ある本の一節が思い出された。

「今日、世界中どこにいても、人が息をすると、その呼気の中に少なくとも1個のカエサル由来の分子が含まれている。」
岩村秀さんによる、興味深い話。

2000年ちょっと前の、ローマのカエサルの、最後のひと息に含まれる空気分子を、みんなで分けあっているというのである。
「空気成分分子の大部分が十分の滞留時間をもっていて、十分な速さで動き回り混じりあい、大気中の濃度が私たちの一呼吸にはいるだけある」という想定で計算すると:


カエサルの口からでた空気分子の数は、10の22乗。 10,000,000,000,000,000,000,000

地球上の全空気分子の数は、10の44乗。
100,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000

10の22乗分の1に薄まるとすると、カエサルの呼気に含まれていた空気分子が、誰にも1個はある計算!

We all breathe the same air.

英語で「みな共に生きている」ことを、「みな同じ空気を吸っている」と表現します。
本当に、おなじ空気のつぶをわけあっているのですね。
時間も空間もこえて、空気で直接つながっています。
目に見えないけれど、このギンモクセイの香りで、感じられます。

空気分子の身になったら、世界は違って見える。

「空気つぶの海で」

「もともと、つながっている。」

じぶんの自然リズムで生きている

アイスクリームとどこでもドア

「細雨養花」

出典・参照:岩村秀・吉田隆『分子は旅をする』、坂口立考『海の宮17号』エッセイ「百年の青雲」

『百年の青雲』(PDFをダウンロードできます)

カエサル