母も時なり②|いま共に生きている

道元禅師の『正法眼蔵』に、「前後際断」ということばがあります。起きている時と寝ている時では、時間と存在のあり方がちがう。冬が春になるのではなく、春が夏になるのでもない。冬には冬のあり方、春には春のあり方がある。生もその時のあり方である。死もその時のあり方である。その時は、その時としてある。今という時を生きているのです。

Death is within life. (死は生の内側にある)

The heart is counting up, not down,
until the final beat.(鼓動は、カウントダウンではない。いのちがたたまれるその時まで、数えあげている)

声は、海を渡る|『母をたずねて三千里』と、アルゼンチンへ渡ったイタリア人

『母をたずねて三千里』は、アミーチスの小説『クオーレ』に収められた「五月のお話」です。少年マルコの旅の背景には近代国家になったばかりのイタリアの貧しさと移民の歴史がありました。それは明治の日本とも重なります。家族を助けるために母が海を渡る。残された子どもが手紙を待つ。便りが途絶える。そして少年が母をたずねて海を越える。

Voices cross the ocean.(声は海を渡る)

Expressionist painting of a figure on a bridge with an agonized face, swirling orange sky and dark fjord in the background.

叫んでいるのはだれ?|ムンク『叫び』の誤解の誤解

ムンクの『叫び』。実はこの人は叫んでいるのではない、世界の叫びを聞いているのだ、という解説がされます。でも、その説明もまた、まだ途中なのかもしれません。自然の叫びが、その人の身体に宿る。その人の身体を通って、私たちにも聞こえてくる。ムンクが描いたのは、叫びの主ではなく、叫びに貫かれ、叫びになってしまう人間です。

You become it.(じぶんがそれになる)

見えない方程式②|右側も左側もじぶんでつくる

よく広告やマーケティングでつかわるフレーズ。勝利の方程式。成功の方程式。幸福の方程式。そういうものがあると飛びついて、教えてもらいたい。と、一瞬も思うかもしれません。でも、違和感が残ります。なぜでしょうか?それは、右側が「他人の結果」だからです。同時に、左側は自分がまだ体験していない、トライしていないことだからです。

You’re the equation.(じぶんが方程式)

見えない方程式①|未知の〈見える化〉

方程式の「方程」とは何でしょうか?昔、中国には、方程師という職人がいました。はかりで、測る人のことです。右と左を見くらべる。 つりあいが取れた時、両者は同じだとわかります。一見ちがう「もの」を、同じ「こと」として結びつける。方程式とは、見えないつりあいを、見える形にしたものです。ふだん私たちは、左側だけを見ています。

Equations visualize the unknown. (方程式とは、未知の見える化)

手書きが、じぶんを写す鏡になる|心の整流化⑥

手は脳の〈見える化〉されたもの。手は、脳の入り口であり、出口です。私たちは、手の動きで脳を育てています。頭の中に何かあることを、取り出して書くというより、書こうとするから、ことばが紡ぎ出される。日記は記憶の倉庫ではありません。手で、じぶん自身を残すしかけです。じぶんのふるまいを写す鏡。その鏡はタイムマシンでもあります。

Write time by hand.(手が時間を書く)

相手の星になる|理解ではなく、相手の側になること

上田閑照さんは、こう言います。「見上げている星からこっちをみたらどうだろうか。逆の方から見るという見方の逆転を通してはじめて無限性にふれることができる。自分を出発にして考えるという考え方がどこかで翻らないと、無限性に触れることはできない。そして、無限性にふれてはじめて何かを手放すことができるようになるのだろう。」

Become the other’s star.(相手の星になる)

Two men sitting on a couch in a colorful painting, one holding a vintage beige computer with a CRT monitor.

未来のハイパーカード|ビルアトキンソンとの対話

1980年当時、コンピュータ?まだ、何をするものなのか、よくわかっていませんでした。ただ、人間の想像力を広げる相棒となるという未来の予感がありました。ビル・アトキンソンさんは、コンピュータの中の情報を、人が見て、指し、描き、選び、つなげられるものにした人です。中でも、ハイパーカード(HyperCard)は特別でした。