
What if it’s the other way around? (話が逆だったとしたら?)
私たちは、いつもの見方や考え方を、知らないうちにくり返しています。そこには、「結果を原因だと思い込むクセ」もあります。
Unlearnとは、すでに身につけていることをいったん外して、切り替えることです。ただ、人間の脳は、いちどlearnしたことを、そのまま消し去ることはできません。だから、忘れるというより、スイッチする、リセットする、元に戻して見直すと考える方が近いでしょう。
ものの見方やふるまいの多くは、気づかないうちに身についています。ですから、「見方を変えよう」と思うだけでは、なかなか変わりません。
そんな時は、話を逆にしてみます。原因と結果を入れ替える。前と後ろをひっくり返す。いつもの見方を、さかさまから見てみる。
まったく別の新しい考えを持ち込むのではありません。いま自分が見ている向きを、反転させてみるのです。

You didn’t do it because you were busy. Or were you busy because you were doing something else? (忙しいからやらなかった。それとも、他のことをしていたから忙しかった。どっちかな?)
「忙しくてできなかった。」
よく聞くセリフですね。
あなたも、よく言うセリフかもしれません。
「忙しい」「時間がない」。それが原因で、できなかった。そう考えると、もっともらしく聞こえます。
本当にそうでしょうか?
実際には、その時間に別のことをしていました。「時間がなくなった」のではありません。別のことを優先したのです。それをあとから、「忙しかったからできなかった」という理由にした。
「忙しい」は原因ではなく、時間を別のことに使った結果。
つまり、話が逆になっていたのです。
「え? そうなの?」
そんな感じがしますよね。
でも、こういうことは、実は数え切れないほどあります。原因だと思っていたものが、よく見ると結果だった。結果だと思っていたものが、実は原因になっていた。少し向きを変えるだけで、見え方が変わります。
You’ve got it backwards. (話がさかさまになっているよ)
「勇気があれば、できるんだけど。」
本当に、勇気が先でしょうか。やってみるから、勇気が出てくるのではないか。
「勇気がない」というのも、やらなかった後からつけた理由かもしれません。
「好きになったら、続けられるんだけど。」
いちばんはじめは、好きかどうかもわかりません。やってみるうちに、わかってくる。できるようになる。それで、好きになることもあります。
つまり、「好きではないから」も、やらない理由として後から使われることがあります。
「興味がわいたら、調べてみます。」
興味があるから調べる。それだけでしょうか。少し調べて、つながりが見えて、それで興味がわくこともあります。
興味は、調べ始めた結果、出てくるのでは?
「覚えたら、思い出せる。」
それだけではありません。思い出そうとすること自体が、記憶をつくり、強くします。覚えているから思い出すだけではなく、思い出すから記憶になる。ここでも、話は逆です。

実は、ことばもそうです。
「英語、聞き取れれば、まねできるんだけど。」
これも、話は逆です。
音声は、発せられた瞬間から、消えていきます。聞いたそばから、音はなくなっているのです。私たちは、耳に入った音を、じぶんの脳内で高速に再現することで、ことばとして聞いています。
だから、聞こえるからまねできる、というのはあくまで、そのように後から言えるというだけです。現実には、まねして再現できるから、聞き取れるのです。(*注2)
原因だと思っているものを、一度、結果の側から見てみる。結果だと思っているものを、原因の側から見てみる。
話を逆にしてみるだけで、いつもの見方に気づくことがあります。
それが、Unlearningのプラクティスです。
It’s the other way around.(話は逆です)
なぜ、話が逆になってしまうのでしょうか。
私たちは、ふるまうたびに、その原因をいちいち考えてから動いているわけではありません。先にふるまいが起こり、そのあとで『なぜそうしたのか』をことばにすることがたくさんあります。
そのとき、後から生まれた気持ちや状態を、行動の前からあった原因のように説明してしまうことがあります。
「忙しかったから」「勇気がなかったから」「好きではなかったから」。話が逆になっていても、自分では気づきにくいのです
では、どうしたらよいでしょうか?
スイッチワード。ここに載せている声のセリフは、切り替えに使うことばです。
頭の中で「見方を変えよう」と思うだけでは、いつもの見方に戻ってしまいます。だから、切り替えるための小さなことばを声に出します。
It’s the other way around. (話は逆だよ)こうしたことばを、見方を切り替えるスイッチにします。
原因だと思ったら、一度、結果かもしれないと見てみる。前から見ていたら、後ろから見てみる。これもプラクティスです。
You don’t replicate it because you can hear it. You hear it because you can replicate it.(聞き取れるから再現できるのではない。再現できるから聞き取れる)
どう考えても、文字を先に学んでから、ことばを身につけた人はいません。声が先、音が先です。ところが、文字を使えるようになった大人は、文字を見て、そこから音を出そうとします。ここでも、順序が逆になります。
文字から音を出すことが悪いのではありません。耳から声を受け取り、まねて、再現する。その働きが先にある。文字は、そのあとから音やことばを表すためにつくられたものです。
文字より、声が先。
聞き取れるから、まねるのではなく、まねて再現するから、聞こえるようになる。
話を逆にしてみる。それだけで、いままで見えていなかった原因に気づくことがあります。
Unlearningを学ぶのではありません。Unlearnできるじぶんを、プラクティスでつくるのです。
プラクティスすることでUnlearningできるようになるのです。
作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど
(*注1) 英語には、unで始まる動詞があります。もとの状態を反転させたり、取り外したりする意味をもちます。undo(元に戻す、取り消す)、uncover(覆いを取る、明らかにする)、unlock(鍵を開ける)など、たくさんあります。
(*注2)「聞く」という認知プロセスは、リアルタイム音声認知・再現力(Real-time Speech Processing Capacity)によります。そこでは、瞬時に音をとらえ、声として再現するボトムアップの働き(Phonological and Sensorimotor Processing)と、意味を呼び起こし、予測し、イメージするトップダウンの働き(Lexical-Semantic and Predictive Processing)が同時に働いています。
「聞き取れれば、まねできる」と考えがちですが、話は逆です。聞いた音を内側で再現できるから、音の流れをことばとして聞き取ることができます。「まねる」とは、単に発音をそれなりにおなじように言ってみることではなく、聞いた音をとらえ、じぶんの内側でそっくり似せて再現しようとすることです。
ところが、文字を見て、すでに身についた自己流の音で音読していたら、その再現のしかたは変わりません。聞き取れない音声をただ聞き続けても、再現できない音は再現できないままです。外から入れる量を増やすだけではなく、聞いた音をまねて、声に出し、比べ、また再現する。聞き取れるようになるための原因を、じぶんの内側につくることが必要です。
「聞き取れたら、まねる」のではなく、「声に出してまねるから、聞き取れるようになる」。ここを原因に置くと、プラクティスの順序が逆転します。それは、幼児が文字を読むより先に、耳から入った声をまねながら母語を身につけていく順序にも沿っています。
暗黙の前提を入れ替える原理|Unlearning シリーズ(7回)
⚫︎話は逆です(結果を原因と思い込むクセ)|Unlearning ①
⚫︎答えは内側にある(答えを外に探すクセ)|Unlearning ②
⚫︎〇〇なんてものはない(概念を実体だと思い込むクセ)|Unlearning ③
⚫︎ 引き算せよ(足りないから足すと思い込むクセ)|Unlearning ④
⚫︎ おかげさまです(自分だけが原因だと思い込むクセ)|Unlearning ⑤
⚫︎ トライするから変わる(やる前に結論を決めつけるクセ)|Unlearning ⑥
⚫︎ 他人事ではない(自分には無関係と思い込むクセ)|Unlearning ⑦
