Empathemian『First things first』

You can’t run before you can walk.(歩ける前に走れない).

赤ちゃんがトラックにすわっています。

まだ立ち上がることはできません。もちろん、走ることもできません。

この赤ちゃんに、「100メートル競走に出場するんだよ。」などと言う人はいないでしょう。

歩ける前に、走ることはできません。立ち上がる前に、歩くことは不可能です。

身体は、順序を飛ばせないからです。

何事にも順序があります。ところが、私たちは大人になると、これと同じことを、意外なほどやっています。

⚫︎ まだできないことを、知識だけで補おうとする。
⚫︎ 結果だけを見て、その手前を飛ばそうとする。
⚫︎そして、うまくいかないと、ただ「もっとがんばろう」とする。

前の段階がなければ、そもそもできないことがあります。また、順序を飛ばして、何かをやろうとすると、見かけはできているように見えても、どこかで行きづまり、その先へ進めなくなります。

そのことにまったく気づいていません。なぜ、そのようなことが起きるのでしょうか。

You can imagine the result. You can’t skip the process.(結果は思い描けても、過程は飛ばせない).

頭の中なら、結果を先につくれます。しかし、現実はそうはいきません。

知識は、現実そのものではありません。知識によって、まだ起きていないことまで、すでにできているような気分になることがあります。この気分が、順序を飛ばせるという錯覚を生みます。

頭では飛ばせても、身体は飛ばせない。
知識では飛ばせても、経験は飛ばせない。

First things first.(ものごとには順序がある)

歩ける前に走れないように、ことばにも順序があります。順序を最初に教えてくれるのは、耳です。

私たちは母の胎内にいるときから音を聞き、生まれたときには、まだ目も身体も十分には使えなくても、耳はすでに働いています。

聞く。
まねる。
声にする。
くり返す。

声を聞き、リズムを身につけ、まねて、やがて自分でも言えるようになる。その順序の中で、人は成長していきます。

人生は「耳のことば」から始まるのです。声でリアルタイムにやりとりする「耳のことば」こそ、ことばの原点であり、土台です。

ことばは、身体を使って身につけるものです。
ここでも、身体は順序を飛ばせません。

ところが、文字を読み書きできるようになるころには、その原点はすでに身体に身についています。身についているからこそ、文字を読んだり書いたりできる。

文字を読んでいるときでさえ、ことばの音は、頭の中で働いています。

けれども、その働きはあまりに自然で、あまりに速いため、私たちは、その土台があること自体を意識しなくなります。

身についているものほど、見えなくなるのです。

でも、「知っている」と「できる」のあいだには、飛ばすことのできない過程があります。

じぶんで聞く。
じぶんで声にする。
うまくできない。
もう一度やる。

その一回一回が、次にできることの土台になります。

耳のことばがあるから、目のことばがあります。
行為があるから、体験があります。
体験があるから、じぶんの記憶になります。

成長には、飛ばせない順序があります。

だから、First Things Firstとは、単に「大切なことを先にやる」という意味ではありません。その先に進むために、飛ばしてはいけないものを、先にすること。

結果を急ぐ前に、じぶんの中に、その結果を生み出す最初の原因をつくることです。

いま、結果ばかりを見て、じぶん自身の最初のプラクティスを飛ばしてはいないでしょうか?

First Things First: English-speaking child

Give it a try.(やってごらん)

英語を母語とする母と娘。このように母の「Give it a try.」を聞き、その音とリズムをまねします。

こうして英語のリズムと音(強弱リズムによる音の認知回路)を身につけ、まねられる音が増えるほど、聞けることば、話せることばも増えていきます。

Mother kneels to speak with her young daughter in a warm, cozy living room bathed in soft light.
First Things First: Japanese-speaking child

日本語を母語とする母と娘。事情はおなじです。日本語のリズムと音(均等リズムによる音の認知回路)を身につけます。幼児の時に身につけるから、ことばを次々に習得していけるのです。

⚫︎ 屋根から家は建てられない|First Things First ② ものごとには構造がある へつづく

作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど

じぶんの内側に原因をつくる|First Things First シリーズ:

⚫︎ 歩ける前に走れない|First Things First ① ものごとには順序がある
⚫︎ 屋根から家は建てられない|First Things First ② ものごとには構造がある
⚫︎ タネをまかずに実はならない|First Things First ③ ものごとには因果がある
⚫︎ ダシはあとから入れられない|First Things First ④ ものごとには不可逆がある
⚫︎ 鏡の前に立たなければ、じぶんの姿は映らない|First Things First ⑤ 認知には法則がある
⚫︎ 上達に迂回路はない|First Things First ⑥ プラクティスには法則がある
⚫︎ 他人の結果はまねられない。原因をまねよ。|First Things First ⑦ プラクティスには絶対原則がある