Empathemian『Gateway』

Now or never.(いましかない)

記憶は、つねに瞬間の出来事。
新しい情報は、すぐに前の情報を消してしまいます。
絶え間ない言語入力の洪水に、脳はどうやって対処しているのでしょうか?

モーテン・クリスティアンセン博士は、こう言います。

「今捉えなかったら消えてしまう(Now or Never)ことは、言語の本質。
言語は、このボトルネックに最も左右されている。
脳は、言語入力をできるだけ速く圧縮して、再コード化しているはず。
いったん元の入力が失われると回復する方法がない。
したがって、利用可能なすべての情報を予測的に使って処理しているはず。」

Chunk and pass. (まとまりにして、どんどん処理)

どんどん、まとまりをつくり、構造的に処理している、と考えられます。
ことばを使えるということは、ボトルネックを通した言語の処理プロセスなのです。

言語(習得)の本質は「時間の制約」

No processing, no learning.(プロセスしないと、学べない)

私たちは、だれしも膨大なことばのネットワークをつくりあげています。
長期記憶の中に蓄えたことばを自在に取り出し、瞬時につくりだすことができます。
その現場は、処理の過程にあります。

言語の習得とは、処理するチカラを身につける(Learn to Process)に他なりません。
つまり、入力の処理と、出力の処理を、途切れなく実行する能力をつけることです。
身体全体で身につけることが、習得するという意味です。

Learn to process.(処理を身につける)

意味を、音や記号の流れに変える処理(ことばを紡ぎ出す、出力)
音や記号の流れを、意味に戻す処理(ことばを理解する、入力)

処理することによって、学ぶことができます。
処理していないことを、学ぶことはできません。
処理したものだけが、学びになります。

料理を五感で味わい、採り入れるから、血肉になり、心の糧になるように、
学びは、プロセスしたものを学びます。

プラクティスしないことは、身につきません。
プラクティスとは、身体全体が処理するプロセスのことなのです。

その大事な役割を担うのが、ワーキングメモリです。
ワーキングメモリは、ことばを瞬時にプロセスする働き。
端的に表現すると、ことばの出し入れです。

ワーキングメモリを鍛える方法は、
ひと息で言えるセリフを覚えて、アウトプットすることです。
アウトプットのくりかえし、ふりかえり。
そして、相手を想像して、ことばを交わすことです。
アウトプットすることで、鍛えられるのです。

ことばを使えるとは:こんなふうに全身の働きを数秒ごとに統合すること

ことばを身につける ③ 「運動のトレーニングとおなじように、適度の強度が必須」へつづく

ことばを身につける ① 「ワーキングメモリは、心の玄関」にもどる

出典・参照:以下のエンパレット、英語トレイルガイド

Morten H. Christiansen, Nick Chater 『The Now-or-Never Bottleneck: A Fundamental Constraint on Language』

Norman Segalowitz『Cognitive Bases of Second Language Fluency』

英語習得の最大のボトルネックを克服する「2秒」

記憶のサイエンスとプラクティス ① ことばを覚えるには?(4回シリーズ)

手と耳と目と姿勢のチカラで [英プラカードの活用法]

センスを身につける [実はいちばんはじめに大切なこと]

脳を活性化させるしくみ ③ [声の入力・出力]

Morten H. Christiansen