Empathemian『Gateway』

Life is in your working memory.(ワーキングメモリの中に、生きている)

「マジカルナンバー4」ということばを聞いたことはありますか?

あれ?ナンバー7じゃなかったっけ?
いっぺんに覚えられるのは7つまで、という話でしょ?

60年ほど前、ジョージ・ミラー博士が説いた、人間の短期記憶の限界を表す数字、7。(*注1)
現在では、短期記憶とは別に、数秒毎に情報を処理するワーキングメモリについて多くの科学的知見があります。(*注2)
一度に覚えられるのは、せいぜい3〜5つ。間をとって、4。(*注3)
この仮説のほうが、日常的な現実の感覚にあいますね。
一度に3つ以上言われても、すぐに頭がいっぱいになります。

ワーキングメモリということばを調べると、
「日常生活のあらゆる場面で、行動の目標や計画を記憶しておくために重要な脳の働き」
といった説明がでてきます。

道を聞いて、教えてもらったとおりに進もうとする時。
「あれ、どっちだったっけ?右に曲がれって言ってたっけ?」
こんなこと、よくありますよね。
ワーキングメモリのおかげで、聞いたことをすぐに理解して、すぐに行動できます。
が、メモリはすぐにいっぱいになります。

ワーキングメモリは、作業記憶。
このように言うと、一時的に記憶しておく働き、というぐらいの印象を持ちそうです。
また、作業ということばは、次元の低い段階の、準備のようにも聞こえるかもしれません。

実は、ワーキングメモリは、一時的な記憶(保持)だけでありません。
一瞬で「覚える」というだけでなく、次々に入ってくる情報を、一瞬で次々に処理する機能です。
保持しながら、リアルタイムの変化に応じて、新しい情報を処理するのです。

処理ということばも、作業とおなじように聞こえるかもしれません。
でも、重大な役割を担っているのです。
捨てたり、つくりだしたり、同時並行で働く、統合機能。
つまり、心の現場なのです。

記憶だけでなく、心の働きの原点「ワーキングメモリ」

Cultivate your working memory.(ワーキングメモリを鍛えよ)

身につけるとは、長期記憶に定着させること。
と言うと、ワーキングメモリはいらないのかな?
いいえ、ちがいます。

すべては、ワーキングメモリを通ります。
ことばを覚える時も、理解する時も、発話・表現する時も。
ワーキングメモリで処理できないことを、覚えることはできません。
もちろん、複雑な問題を考えることも、できません。

長期記憶と一瞬のうちにやりとりしながら、同時並行して起こる情報を処理=統合するプロセスです。
何をするにも、ワーキングメモリを通るのですから、まさに心の玄関です。
驚くべき速さで、いくつものことを処理し、しかも、休みなく、働いているのです。

ワーキングメモリの容量が限られているのは。理由があることなのです。
制限・制約があるように見えるのは、高速で同時・逐次処理を、絶え間なく、働かせつづけるため。
メモリがあふれるようなことを、効率的、効果的に処理する必要があります。
私たちは、そのおかげで暮らせるわけですね。

ワーキングメモリは、学びのボトルネック。
ボトルネックというのはネガティブな意味ではありません。
そこが、最もクリティカルだという意味。
そして、必ずその制約を通して、私たちは生きているという意味です。

ことばを身につけるボトルネックも、あなたのワーキングメモリ。
なぜなら、ことばは、聞いたそばから消えてしまう、音のつらなりだからです。

では、どうしたらワーキングメモリを鍛えたり、上手に使ったりできるのでしょうか?
ことばを身につけるということは、どういうことなのでしょうか?
何をどのようにプラクティスしたらよいのでしょうか?

ことばを身につける ② 「処理することを学ぶ、処理したものだけが身につく」へつづく

本エンパレットシリーズの予定は:

ことばを身につける ③「身体トレーニングとおなじように、適度の強度が必須」
ことばを身につける ④ 「心の(ことばの)ものさし」をつくる
ことばを身につける ⑤ 「ほんの3分で変化が生まれる」

出典・参照:以下のエンパレット、「英プラガイド」

Alan Baddeley 『Working Memory』、Torkel Klingberg 『The Overflowing Brain』

Tracy Packiam Alloway 『Understanding Working Memory」、芋坂満里子『心のメモ帳』

英語習得の最大のボトルネックを克服する「2秒」

記憶のサイエンスとプラクティス ① ことばを覚えるには?(4回シリーズ)

脳を活性化させるしくみ ③ [声の入力・出力]

ワーキングメモリ(Wikipedia)

(*注1) George Miller 『The Magical Number Seven, Plus or Minus Two』(Wikipedia)

(*注2)Nelson Cowan『What are the differences between long-term, short-term, and working memory?』論文

(*注3)Nelson Cowan 『The magical number 4 in short-term memory』論文