
Practice doesn’t end when you finish. (プラクティスは「やったら終わり」ではない)
毎日、歯を磨きます。
「今日は、歯を磨こう。」そう決心しなくても、いつもの時間になれば、自然にしています。
すでに身についているからです。プラクティスも、こんなふうに、じぶんから自然にできるようになることをめざします。
でも、身につけるためには、「はじめる」だけでなく、「おわる」ことも大切です。
習い事でも、仕事でも、最後になると、つい気がゆるみます。
⚪︎終わった、終わった。
⚪︎今日は、ここまで。
⚪︎あとは片づけて帰ろう。
⚪︎次は、また今度。
終わりが見えた瞬間、気持ちはもう次へ向かっています。
でも、職人の仕事や、長く続けてきた稽古を見ると、終わりほどていねいです。
⚫︎使った道具を手入れする。
⚫︎元の場所に戻す。
⚫︎最後のひとつまで、同じようにする。
⚫︎今日したことを確かめて終える。
それは、単に「きちんとしている」ということではありません。
今日の仕事を、今日だけで切らないためです。終わり方は、次に始める時の状態をつくっています。
プラクティスも同じです。「やった。終わった。」で手放してしまえば、そこで途切れます。
終わりは、プラクティスがなくなるところではありません。今日したことを、次へ渡すところです。
だから、終わりまでていねいにする。じぶんで続けられるようになるためのプラクティスは、そこから始まっています。
Keep it with you. (そのまま、持っていく)
練習には、練習している時間と、次に練習するまでの「あいだ」があります。
ふつう、練習というと、その場でしている時間だけを考えます。
でも、練習を終えたあとにも、さっきしたことがふと浮かぶことがあります。
⚫︎あそこ、もう一度やってみたいな。
⚫︎さっきの感じ、何だったんだろう。
⚫︎あのひと言、まだ耳に残っている。
思い出す。
頭の中でもう一度やってみる。
ふと、口に出してみる。
こうした「あいだ」も、身につけるプロセスの一部です。
「練習は終わった」と全部そこへ置いてくれば、今日と明日のあいだが切れてしまいます。
今日したことを、そのまま置いてこない。次に始めるまで、少し持っていく。
プラクティスは、している時間だけで終わるものではありません。
Say it again later. (あとで、もう一回言ってみよう)
身につけるというと、覚えて、頭の中にしまっておくことのように思います。
でも、ことばは、しまってあるだけでは使えません。必要な時に、じぶんから取り出せることが大切です。
その場では言えた。見ればわかる。聞けば思い出す。けれど、少し時間をおいて、何も見ずに、じぶんから声にできるでしょうか。
だから、あとでもう一度言ってみます。
思い出そうとする。声にする。またあとで、もう一度出してみる。
このくり返しによって、ことばは「覚えているもの」から「じぶんから出てくるもの」へ変わっていきます。
身につけるとは、しまいこむことではありません。必要な時に、取り出しやすくしていくことです。
Use your inner voice.(心の中で声にしよう)
ことばは、声に出している時だけ働くわけではありません。
ふとした時に、さっきのひと言が頭の中に戻ってくることがあります。
声に出さなくても、じぶんの内側で、そのことばをもう一度言ってみる。
これも、プラクティスです。
ことばを思い出し、内側で声にすることで、今日の体験がそのまま途切れずに残ります。
⚫︎頭の中で言ってみる。
⚫︎できる時には、声に出してみる。
⚫︎そして、その声がまた内側に残る。(*注1)
こうして、ことばがじぶんの内と外を行き来するようになると、練習している時間と、練習していない時間の境目も少しずつ薄くなります。
Stay with your heart.(心を途切れさせない)
まとめ
❶ 終わりまで、ていねいにする
❷ 練習と練習の「あいだ」も大切にする
❸ ことばを、取り出しやすくする
❹ 内なる声で、今日を明日につなぐ
作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど
(*注1) 声に出さず、心の中でことばを発する働きを「インナースピーチ(内語)」と呼びます。私たちは、外から聞いたことばをじぶんの声にし、その声をまた内側で再現しながら、ことばを身につけています。覚えるとは、ことばを頭の中にしまいこむことではありません。声のことばを身体に取り込み、必要な時に、内なる声として、また実際の声として取り出せるようにすることです。インナースピーチについては、こちらのエンパレットノート「ことば『インナースピーチ』論」を参照。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency 7つの実践
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ① 自発(はじめる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ② 自助(じぶんを助ける)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ③ 自信(やってみる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ④ 自省(ふりかえる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑤ 自問(問いを持つ)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑥ 自覚(じぶんに気づく)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑦ 自走(明日につなぐ)
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency 7つの実践

じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ① 自発(はじめる)
毎日のプラクティスを意志に任せると、いつもの行動に流され、始める前から惰性の中にいます。私たちは歯みがきのように、考えなくても自発できるしくみをすでに身につけています。おなじ時間、場所、姿勢を決め、静かにすわり、場を整える。余計な負担を減らし、始めやすいしくみをじぶんの内側につくることが、自発の第一歩です。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ② 自助(じぶんを助ける)
母語の音やリズム、これまでの学び方は、自己流として身体にしみこんでいます。問題はそれに気づかないまま「練習した」と思ってしまうこと。自助とは、お手本の力を借り、じぶんでは見えない自己流に気づき、修正することです。まねることは低次の練習ではない。お手本を再現しようとして初めて、違いが見え、自己流を少しずつ変えていけます。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ③ 自信(やってみる)
自信がない。でも、そもそも何回やったでしょう。まだ失敗すらしていないのに、失敗を先回りして避ければ、できるようになる機会まで失います。自信は、やる前にあるものではありません。まず一回やってみる。思うようにいかなくても、予想が経験に変わります。演じて、くり返す。その一回一回が、じぶんでできる自信の原因になります。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ④ 自省(ふりかえる)
気づかなくても、私たちには先を急ぐクセがあります。早く終えようとすると体験が定着する前に次へ進んでしまいます。自省とは、今やったことに戻り、ていねいにふりかえること。じぶんの声を聞き直し、その場でお手本と比べると、「なんとなく違う」が「ここが違う」に変わります。そのくりかえしで、じぶんでは見えなかった違いに気づけます。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑤ 自問(問いを持つ)
答えをすぐ外に求めると、じぶんで問い、気づく機会まで手放してしまいます。外で起きたことを、どう見て、聞いて、受け取るかは、じぶんの内側で起きています。まず、じぶんにたずねる。「何が邪魔している?」と問いの向きを変え、最も大切なことに注意を向けます。問いをひとつに絞り、次の行為につなげることが、自問のプラクティスです。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑥ 自覚(じぶんに気づく)
「わかった」と思っても、たいていはまだぼんやりしています。「わかった気」で体験を流さず、じぶんの軌跡をたどって反芻する。気づいてから書くのではなく、一行書くことで気づきやすくする。さらに、気づきやフィードバックを次の行為に返し、またふりかえる。この循環を重ねることで、じぶんのふるまいが見え、自覚が育ちます。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑦ 自走(明日につなぐ)
プラクティスは、やったら終わりではありません。終わりまでていねいにし、練習と練習の「あいだ」も大切にする。ことばを思い出し、後でもう一度声にすることで、覚えたことを必要な時に取り出しやすくします。内なる声も使いながら、今日の体験を明日へつなぐ。その小さなくり返しを毎日のしくみにすると自走する力が少しずつ育っていきます。
