
Sit quietly. (静かにすわる)
「今日から、毎日やろう。」
そう決めたはずなのに、なかなか始まりません。
⚪︎なんとなく、スマホ画面をいじっている。
⚪︎いつもしていることが、はじまっている。
⚪︎今日は時間がないので、明日からにしよう。
やろうという気持ちがないわけではありません。
ただ、なかなか、始まらない。
私たちは、ひとつひとつを「これをしよう」と決めているわけでもありません。すでに身についている行動に、惰性で流されています。
そして、やらなかった後になって、理由ができます。
⚪︎忙しかったから。
⚪︎時間がなかったから。
⚪︎気が乗らなかったから。
その理由が、できなかった原因だったように思えます。
その一方で、「もっと意志を強く持たなければ」と思ったりもします。
では、何が起きているのでしょう。
⚪︎別のことをしている
⚪︎他に優先することがある
⚪︎やらなくても何も起きない
⚪︎そもそも時間はいつも埋まっている
意志に任せた時、そのとおりに始まらなければ、いつものことが続く。
つまり、始める前に、すでに惰性の中にいるのです。
だから、もっと強い意志を持とうとするのではありません。惰性から抜ける小さなきっかけを、先につくります。
「意志を持つ」というと、聞こえはよいものです。でも、その日の意志に任せていたら、毎回、「やるか、やらないか」を決めるところから始めなければなりません。
うまく始まらない理由は、意志の弱さではなく、この構造にあります。
Make it easy to begin. (始めやすくする)
実は、あなたはすでに、考えなくても自発できるプラクティスを身につけています。
歯みがきです。
毎日、「今日は歯をみがこう」と意志を固めたり、「ちゃんと続けられるだろうか」と心配したりはしません。鏡の前に立ち、歯ブラシを手に取れば、あたりまえのように始まります。
人にやってもらおうとも思いません。今日は気が乗らないからやめておこう、とも考えません。
つまり、私たちはすでに、じぶんから始め、じぶんを助け、毎日続けるという成功体験を持っているのです。
では、なぜ歯みがきは始められるのでしょう。
意志が強いからではありません。
いつもの場所があり、使うものがあり、いつもの動作があります。場所と姿勢と最初の動きがつながっているので、毎回「やるか、やらないか」を決める必要がありません。
新しいプラクティスにも、このしくみをつくります。
⚫︎いつもの場所に行く。
⚫︎静かにすわる。
⚫︎エンパシームをひらく。
どれも小さなことです。
でも、この小さな動作が、「やろうと思っているじぶん」から「もう始めているじぶん」へ移るきっかけになります。
歯みがきは、毎日のコミットメントでもあります。じぶんとの約束です。
といっても、毎朝、「今日も約束を守ろう」と考えているわけではありません。やらなかったからといって、すぐに何かが起きるわけでもありません。それでも、歯ブラシを手に取ります。
それは、もう身についているからです。
身につくとは、頭で考えてからするのではなく、身体が覚えていて、いつものようにできることです。じぶんとの約束が、毎日のふるまいになっているのです。
始めやすくするとは、じぶんを奮い立たせることではありません。
すでにできているように、始まるしくみをじぶんの内側につくることです。
Keep it simple.(シンプルにする)
では、始めるしくみを、具体的につくってみましょう。
むずかしいことはいりません。
⚫︎ おなじ時間
⚫︎ おなじ場所
⚫︎ おなじ姿勢
できるだけ、静かな場所にすわります。姿勢を整えます。そして、いつものように始めます。
「どこでやっても、同じじゃないの?」そう思うかもしれません。
でも、脳にとっては同じではありません。
周囲には、気づいていない音や動きがたくさんあります。人の気配、外から聞こえる音、何かが動く気配、机の上に置かれたもの。意識を向けていなくても、そうした刺激はすべて脳に入ってきます。
聞いていないつもりでも、音は耳に入ります。見ていないつもりでも、ものは視野に入ります。脳は、その中から必要なものを選び、いらないものを退けながら、目の前のことをしています。
だから、場を整えます。
⚫︎できるだけ静かなところにすわる。
⚫︎机の上をきれいにする。
⚫︎必要のないものは置かない。
小さなことのように見えますが、どれも余計な刺激や動きを減らし、脳に余計な負担をかけないためです。
とくに、声を聞き、まねるプラクティスでは、周囲の音を減らすことには大きな意味があります。(*注1)
姿勢も同じです。
いつもおなじ姿勢をとることは、「ここからプラクティス」という身体への合図になります。また、呼吸を整え、声をしっかり出せるようにすることでもあります。
聞いた声を、じぶんの声で再現する。そのためには、耳だけでなく、声を出す身体もプラクティスに向けて整えます。
Be a doer.(する人になる)
まとめ
❶ 意志に任せない
❷ 始まりやすいしくみをつくる
❸ 場を整え、余計な負担を減らす
作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど
(*注1) 「英語耳」とは、リアルタイムに音声を認知し、再現できる力を言います。話し声は、0.1秒前後のごく短い時間の中でも次々に変化します。脳はその瞬間ごとに、音の特徴を捉え、ことばや場面と結びつけながら処理しています。周囲の音を減らすことは、聞こうとする声に耳を向け、その音を再現するための環境を整えることでもあります。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency 7つの実践
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ① 自発(はじめる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ② 自助(じぶんを助ける)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ③ 自信(やってみる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ④ 自省(ふりかえる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑤ 自問(問いを持つ)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑥ 自覚(じぶんに気づく)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑦ 自走(明日につなぐ)
