練習の矛盾を克服する

集中している間はよいのだけれど、結果を気にするとうまくいかなる。集中しているかどうかに意識が向くと、集中がとぎれてしまう。そういう経験がある人は多いのではないでしょうか。

トーマス・スターナーさんは言います。
どんな練習も、肝心なのはプロセス、結果ではない。結果に気が向くのは、「判断」しているから。
いい・わるいの評価を瞬時にしている。知らないうちに、ある理想の尺度にあわせている。自分自身の「判断」が実はバリアになってしまうのだ、と。

脳は、状況を先回りして、まだ事が起きる前から「失敗しないように」という瞬時の判断ができます。私たちが、生まれてこの方、身につけてきたものです。

脳にそっと働きかける

脳の可塑性(かそせい)ということばがあります。
英語のニューロプラスティシティ (Neuroplasticity) から来ています。どちらも、ちょっとむずかしそうに聞こえますが、形を後からいろいろ変えられる「プラスチック」のように「脳はやわらかい」という意味です。

ノーマン・ドイジさんは、こう言います。
「脳は、自ら形を変えていく力を持っている。それどころか、自らをつくり直すことすらできる。これまでの常識と事実はちがって、人間の脳は、驚くほどの回復力と環境適応力を持っている。」

無意識の力を活かす

ティモシー・ウィルソンさんは、こう言っています。
人間には、無意識のうちにきちんと働く、潜在的な能力が備わっている。

私たちは、ことばを意識レベルで理解しているのではありません。相手が発する一連の音の流れを解析したり、奥行きのある世界の対象物をいちいち分析して、理解しているのでもありません。

意識的にアクセスできない心的な過程を「適応的無意識」(The Adaptive unconscious)と呼びます。人間の能力には、意識して発揮しようとするとうまくいかず、むしろ流れに任せて身体を動かした方がうまくいくものがあります。潜在的だけれども、意識して発揮するのがむずかしい力。それは、知らないうちに働いていて、自分の行動にも影響している力です。