Empathemian『Process』

Process in real time. (脳内の処理はリアルタイム)

⚫︎ ことばは、待ってくれない

ことばは、考えてから処理するのでは間に合いません。

音は次々にやってきます。聞こえた音を捉え、まとまりにし、記憶と結びつけ、次へ渡す。その間にも、次の音が入ってきます。

ことばを使うとは、この処理を時間の中でくり返すことです。

⚫︎ 処理には、スピードがある

「速くしゃべる」のではありません。

同じセリフでも、5秒かけて処理することと、2秒の中で処理することは、脳にとって同じ仕事ではありません。

知っていること、わかること、時間をかければ言えることと、その場で処理できることは別です。

ことばは、発せられたそばから消えていきます。脳はそれを、短いまとまりにして次々に処理します。

いま捉えて、次へ渡す。この時間の制約が、ことばの処理にはじめから組み込まれているのです。

⚫︎ 2秒のワーキングメモリ|聞いた音を瞬間的につかまえておく力

一瞬で消えることば。
それでも私たちは、いま聞いたことばを少しの間つかまえて、次に来ることばとつなげています。

「What have you…」と聞いている時も、最初の音を残しながら、そのあとに来る音を受け取っています。

聞いた音を一時的に保つ。
その間に、知っていることばと結びつける。
意味を捉えながら、次の音を受け取る。

こうした処理を、その場、その場でしています。
その瞬間ごとの処理を「リアルタイム」と言います。

ところが、処理に時間がかかるとどうなるでしょう。

ひとつの音に手間取っているうちに、次の音がやってきます。さらにその次もやってきます。

処理が追いつかなくなり、脳はすぐにいっぱいになってしまいます。
あふれてしまうイメージですね。

このように、いま必要なことを一時的に保ちながら、その場で処理する脳の働きを「ワーキングメモリ」と呼びます。

私たちはつねに、このワーキングメモリのおかげで、ことばを聞いたり、話したりすることができます。

ただし、そこで使える時間には限りがあります。聞いた音をいつまでも置いておくことはできません。次の音が来る前に、いまの音を処理して、次へ渡していく必要があります。

その時間は、せいぜい2秒ほどです。(*注1)

Process it with intensity. (処理力を鍛える)

⚫︎ 限られた時間の中でトレーニングする

だから、ことばの練習では、時間をかければできるというだけでは足りません。

手本のセリフが2秒なら、その2秒の中で、音とリズムを捉え、短いまとまりとして保ち、意味やイメージと結びつけます。声にするときには、思い出したことばを、身体を動かして音にします。

ことばの処理は、音だけを処理する仕事ではありません。

音、リズム、意味、イメージ、記憶、そして声を出す身体の運動。こうした働きが連携して、限られた時間の中で進みます。

5秒、10秒とかければできることでも、実際の会話では、その時間はありません。

これは、単に速くするということではありません。こうした働きを、限られた時間の中で連携させて処理できるようにする、ということです。

処理する力は、処理することで身につきます。

短いセリフを使うのも、自然な速さに近づけるのも、ただ練習を難しくするためではありません。じぶんで処理できる範囲に、少しだけ時間の負荷をかけるためです。(*注2)

時間をかければできることを、限られた時間でもできるようにする。そのくり返しによって、ことばを瞬時に処理する力を育てます。

⚫︎ 「えんじる」と、処理の瞬発力

英語耳°プラクティスでは、この処理を実際に行います。

「まねる」で手本の音とリズムを捉え、声にしたあと、数分あけて「えんじる」に進みます。

「えんじる」では、もう手本の音声はありません。場面を見て、さきほどのセリフを思い出し、その場で声にします。

ここで必要になるのが、瞬発力です。

セリフを覚えているかどうかだけではありません。場面を手がかりに記憶から取り出し、声にするまでの処理が、その場でできるか。

時間をかけて思い出し、頭の中で文字にしてから読むのであれば、会話で使う時とは違う処理になります。

「えんじる」では、場面からことばを取り出して声にする。その実際のプロセスに、処理する力がそのまま現れます。

⚫︎ 英語耳°では、実際のプロセスを測る

英語耳°で測るのは、問題に答えられたか、単語をいくつ知っているか、といった知識の量だけではありません。

「えんじる」で場面が示されてから、声が出るまでにどれくらい時間がかかるか。短いセリフを、途中で組み立て直さずに出せるか。手本の時間とリズムにどれくらい近づいているか。

実際に起きたことを、そのまま捉えます。

時間をかければできることと、その場でできることは同じではありません。

英語耳°プラクティスでは、じぶんの声と時間が記録に残ります。だから、じぶんの処理がどう変わってきたかも確かめることができます。

Grow your capacity. (脳のキャパを増やす)

⚫︎ 処理できる範囲を、少しずつ広げる

はじめから、何でも2秒で処理できるわけではありません。

まずは短いセリフを使います。手本をまねて、音とリズムをひとまとまりで声にする。少し時間をあけたら、今度は手本なしで思い出して声にする。

うまく出てこなければ、また手本に戻ればよいのです。

くり返すうちに、前よりも早く思い出せるようになる。途中で止まらずに言えるようになる。より長いまとまりを、一度に扱えるようになる。

処理できる範囲が、少しずつ広がっていきます。

脳のキャパを増やすとは、たくさん詰め込むことではありません。

限られた時間の中で、処理できることを増やすことです。

この秒内の処理を、実際のセリフでくり返していきます。

(*注1) ことばの処理には時間の制約があります。短い時間の中で情報を保ち、処理し、次へ渡していくワーキングメモリの働きについては、以下のエンパレットノートに詳しく解説しています。

(*注2) 処理する力を育てるには、時間の制約そのものを適度な負荷として使います。処理速度とトレーニングの関係については、以下のエンパレットノートに詳しく解説しています。

⚫︎ 身体(運動
① 身体全体で声に出す (Vocalize)
② 小分けにしてまとまりにする (Chunk)
③ セリフをビートに乗せる (Beat)

⚪︎ 脳(認知・想起
④ 瞬間の処理力を鍛える (Process)
⑤ 文字ではなく、情景を思い出す (Recall)
⑥ スローにして比較する (Contrast)

◎ 心(自走・再帰
⑦ いつもセリフを口ずさむ (Internalize)

英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion(リアルタイムの音声認知・再現力を鍛える練習ループ)

⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion①身体を使って声に出す(Vocalize)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion② 小分けにしてまとまりにする(Chunk)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion③ セリフをビートに乗せる(Beat)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion④ 瞬間の瞬発力を鍛える(Process)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion⑤ 文字ではなく、場面を思い出す(Recall)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion⑥ スローにして比較する(Contrast)
⚫︎ 英語耳°獲得のプラクティス|Recursion⑦ セリフをいつも口ずさむ(Internalize)

作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど