
Recall the scene. (場面を思い出す)
⚫︎ 英語の実音は、白紙から始める
英語の文字を見れば、音が浮かびます。
文字を覚えれば、頭の中で読めます。
黙読するときにも音があります。
文字から呼び起こされるその音は、実は、じぶんが読めるようにつくった音です。
なぜならば、私たちは、英語の単語や文を、文字といっしょに、日本語の音にして覚えてきたからです。
日本語の音のしくみを使い、母音を足し、音を一つひとつ区切り、文字どおりの長さで読む音です。
あえて言うなら、Fake音の英語です。
そのため、ネイティブのお手本を聞く時に、実際には言っていない音も、じぶんで付け加えたりします。
聞き取れない理由は、FAKE音の英語をたくさん覚えて、それをものさしにしてネイティブの音が聞こうとするからです。
耳に入る実音と、頭の中にある音が違うからです。
日本語耳°を育ててきたのですから、仕方のないこと、あたりまえのことです。
大切なのは、いま知っている音はFake音で、実音については、いったん白紙だと思うことです。
聞くときにも、音をとらえると同時に、意味や場面を呼び起こしています。(*注2)
⚫︎ 文字にも「音」がついている
文字そのものを否定しているのではありません。
文字で覚えたことにも、音は伴います。私たちは文字を読むときにも、そのことばの音を頭の中でつくっています。
ワーキングメモリにも、ことばの音韻情報を短い時間保ち、くり返す働きがあります。これは phonological loop(音韻ループ)と呼ばれます。(*注1)
だから問題は、「文字か、音か」という単純な二者択一ではありません。
問題は、文字と結びついている音が、英語の実音とは違っていることです。
文字を思い浮かべれば、それといっしょに、これまで覚えてきたFAKE音英語も呼び起こされます。
Process it with intensity. (処理力を鍛える)
⚫︎ 文字をたどっている時間はない
Recursion④では、英語の音声を処理する時間について見ました。
聞こえた音を短い時間の中で保ち、意味や場面と結びつけながら、次々に処理していきます。
その最中に、音を文字に置き換え、文字からじぶんの音を呼び出していたら間に合いません。
聞くというリアルタイムの認知では、入ってくる音を捉えるボトムアップの働きと同時に、意味を呼び起こし、予測し、イメージするトップダウンの働きが進んでいます。
そこで必要なのは、文字を経由することではなく、聞こえた音と、意味やイメージが瞬時につながることです。
⚫︎ 文字を思い出さないために、場面を思い出す
そこで、場面を思い出します。
相手の表情、動き、その場の状況、やりとりの流れ。直前に見た場面を思い浮かべ、そこで聞き、じぶんでも声にした音を思い出します。
場面から文字を思い出すのではありません。
文字を思い出さないために、場面を思い出すのです。
文字に戻れば、文字といっしょにFAKE音英語が出てきます。場面を思い出し、そこに結びついた意味と、手本で聞いた音を呼び起こす。
文字を介さず、場面と意味と音を結びます。
ことばはもともと、耳から入る音だけでできているわけではありません。表情や身ぶり、目に入る情景と、声の音がひとつになって働いています。この「耳と目」の結びつきについては、こちらで詳しく紹介しています。
⚫︎ 思い出すこと自体を練習する
記憶というと、覚えたものを貯めておくことを考えがちです。
でも、ことばは、貯めてあるだけでは使えません。必要な瞬間に取り出せなくてはなりません。
大切なのは、思い出すことです。
そして、思い出すこと自体にもプラクティスがいります。
一度聞いたから覚えるのではありません。思い出そうとする。思い出して声にする。また思い出す。
その想起をくり返すことで、必要なときに取り出せる記憶にしていきます。
場面を思い浮かべることも同じです。相手の表情や動き、その場の情景を思い出し、その場にいるつもりでセリフを声に出す。
英語耳°トレイルでは、Potion 9 『場面の意味を想像せよ』で、情景を思い浮かべることを、実際のプラクティスとしてくり返します。
場面を思い浮かべることは、単なる「覚え方のコツ」ではありません。情景を思い浮かべ、その場にいるつもりでセリフを演じる。音、リズム、イメージ、身体運動を結びつけるプラクティスです。
Grow your capacity. (脳のキャパを増やす)
⚫︎ 「まねる→えんじる」は、想起のプラクティス
英語耳°トレイルは、この「思い出す」という活動を、はじめからプラクティスの中に組み込んでいます。
「まねる」では、場面を見ながら手本を何度も聞き、音とリズムを捉え、身体を使って声にします。
そして数分後の「えんじる」では、手本がありません。
場面を思い出す。
意味を呼び起こす。
聞いた音を思い出す。
すぐに声にする。
これは、覚えているかどうかを調べるテストではありません。
想起する力そのものを育てるプラクティスです。
⚫︎ Recall――必要な瞬間に呼び起こす
①身体を使って音をつくる。
②チャンクに分けてつなげる。
③ビートにあわせて音を縮める。
④短い時間の中で処理する。
そこでつくった音を、⑤では思い出します。
文字から呼び出すFAKE音英語ではなく、手本を聞き、身体でまね、場面と結びつけた音を呼び起こす。
文字ではなく、場面を思い出す。
場面と意味と音を結び、何度も想起する。
Recallとは、必要な瞬間に、実際の音を呼び起こす力です。
(*注1) Baddeleyらのワーキングメモリモデルでは、ことばの音韻情報を短時間保持し、反復するしくみを phonological loop(音韻ループ)と呼びます。文字で提示されたことばも、読める文字であれば音韻的に符号化され、保持に利用されます。
(*注2) 「聞く」という認知プロセスでは、瞬時に音をとらえるボトムアップの働き(Phonological and Sensorimotor Processing)と、意味を呼び起こし、予測し、イメージするトップダウンの働き(Lexical-Semantic and Predictive Processing)が同時に働いています。詳しくはRecursion④「秒内の瞬発力を鍛える(Process)」を参照。

⚫︎ 身体(運動)
① 身体全体で声に出す (Vocalize)
② 小分けにしてまとまりにする (Chunk)
③ セリフをビートに乗せる (Beat)
⚪︎ 脳(認知・想起)
④ 瞬間の処理力を鍛える (Process)
⑤ 文字ではなく、情景を思い出す (Recall)
⑥ スローにして比較する (Contrast)
◎ 心(自走・再帰)
⑦ いつもセリフを口ずさむ (Internalize)
英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion(リアルタイムの音声認知・再現力を鍛える練習ループ)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion①身体を使って声に出す(Vocalize)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion② 小分けにしてまとまりにする(Chunk)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion③ セリフをビートに乗せる(Beat)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion④ 瞬間の瞬発力を鍛える(Process)
⚫︎ 英語耳°獲得のプラクティス|Recursion⑤ 文字ではなく、場面を思い出す(Recall)
⚫︎ 英語耳°を獲得するプラクティス|Recursion⑥ スローにして比較する(Contrast)
⚫︎ 英語耳°獲得のプラクティス|Recursion⑦ セリフをいつも口ずさむ(Internalize)
作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど
