
Listen to your voice. (じぶんの声を聞く)
⚫︎ 気づくには、原因がいる
「気づく」とは、どういうことでしょうか?
気づくとは、それまで見えていなかった違いを見つけることです。
「さっきと違う」「いつもと違う」「思っていたのと違う」。気づきには、いつも何かとの違いがあります。
たとえば、「今日は体調がいまひとつだな」と感じることがあります。
そのとき、今日のじぶんと、いつものじぶんを意識して並べて比べているわけではありません。それでも、「いつもと違う」という感覚が生まれます。
ふだんの経験からつくられた「いつもの感じ」が、すでにじぶんの中にあるからです。いま感じていることが、そこから少し外れる。その差を捉えたときに、「あれ?」と気づきます。
つまり、気づくときに、比べる二つのものが目の前に並んでいるとは限りません。いまの体験は、これまでの体験や記憶と照らし合わされています。その差が浮かび上がることが、気づきになります。
ここに、気づきを育てる手がかりがあります。
気づこう、気づこうと力を入れても、比べるものがなければ、違いは浮かび上がってきません。反対に、じぶんで一度やってみる、あとで見直す、前の記録を残しておく。そうすれば、比べるものをじぶんでつくることができます。
気づきそのものを直接つくることはできません。でも、気づきが生まれる原因はつくれます。
「気づく」という心の働きについて、こちらのエンパレットノートでくわしく紹介しています。
Contrast and notice. (比べて、気づく)
⚫︎ 気づいたから書く、ではない|未知にじぶんをしむける
英語のお手本を聞いているだけでは、じぶんとの違いはわかりません。
まず、じぶんで声にしてみる。うまくできなくても、その声があるから、お手本とじぶんを比べることができます。
一度やってみたじぶんがあるから、もう一度お手本を聞いたときに、「ここが違う」と気づけます。下手な練習も、気づくための大切な材料になるのです。
書くことも同じです。
「気づいたことを書き留める」と言いますが、気づいたことが先にあって、それをあとから書くだけではありません。
聞き直す。お手本とじぶんの声を比べる。そして、何が違うか、とにかく書いてみる。
書こうとするから、もう一度聞きます。書こうとするから、違いを探します。ことばにしてみると、そこに書かれたことが、さらに聞き直すときの気づきのタネになります。
まだ何かはわからない。それでも、そこにあるかもしれない違いに気づける方向へ、じぶんを向ける。「未知」にじぶんをひらく行為が、気づきの原因をつくるのです。
Focus on the gap. (違いに目を向ける)
⚫︎ 聞き比べる|違いと変化が見えてくる
じぶんの声は、声にしているその時には、なかなかわかりません。あとから聞き直すことで、はじめて「じぶんの声」として聞くことができます。
お手本とじぶんの声を聞き比べる。一度だけでなく、行き来しながら何度も聞く。すると、「何となく違う」だったものが、少しずつ具体的な違いとして聞こえてきます。
英語耳°トレイルでは、リズムミラーを使って、お手本とじぶんの声を聞き比べ、見比べることができます。音の強弱やリズムが見えることで、耳だけでは捉えにくかった違いにも目を向けられます。
比べる相手は、お手本だけではありません。
前に録音したじぶんと、いまのじぶんを比べることもできます。同じセリフでも、前とは違って聞こえる。前にはなかったリズムが出ている。できなかったところが、少しできるようになっている。
お手本との差に気づくことも、じぶん自身の変化に気づくことも、比べるからできることです。
聞き直すたびに、比べるものが増えていきます。そして、比べるものが増えるほど、次に気づけることも増えていきます。
⚫︎ 気づけないじぶんに気づく|小さな違いを見る
聞き比べても、なかなか違いに気づけないことがあります。
それは不思議なことではありません。すぐにわかる違いなら、そもそも気づかないまま、同じことをくり返してはいないでしょう。
気づけないから、その違いが残っています。
じぶんでは同じように言っているつもりなのに、お手本とは違う。何度聞いても、どこが違うのかわからない。そこには、「違いがある」ということと同時に、「その違いに気づけない状態にいるじぶん」がいます。

このリズムミラーでも、本人はお手本と似ていると思っていました。でも、見比べると違います。
問題は、この違いに気づけないことです。
私たちは、音を何の前提もなく聞いているわけではありません。「こんな音が来る」と、じぶんなりの音の捉え方で待ち受けています。その待ち受け方そのものには、なかなか気づけません。
「じぶんは、こんなふうに聞いているのかもしれない」とわかると、聞く方向ができます。
比べて見る。比べて聞く。何かがあるという予感に心を開いて、何度も連続してくりかえします。
すぐに同じ音を出せなくても、「ここに、まだじぶんには聞こえていない違いがある」とわかる。それが、次の気づきへの方向をひらきます。。
英語の音では、ほんのわずかな時間の違いが、聞こえ方を大きく変えます。
音が少し長い。短い。つながる。間があく。ほんの0.1秒ほどのずれでも、リズムや音のまとまりは変わります。
小さな違いが、大きな違いをつくっているのです。
逆にいえば、大きく違って聞こえるものも、小さな違いをひとつずつ見つけていけば、近づけることができます。
大切なのは、「わからない」で終わらせないことです。
いまのじぶんには、まだこの違いが聞こえていない。そう気づくことが、次の気づきの始まりになります。
Listen to your voice. Slow it down. (じぶんを聞き直す。じっくりと)
⚫︎ スローにして聞く|気づけないじぶんを助ける
音声は、待ってくれません。
英語の音は、ほんの一瞬のうちにつながり、弱まり、消えて、次へ進みます。いまのじぶんには捉えられない違いも、その速さの中では、そのまま通り過ぎてしまいます。
そこで、時間を引き伸ばします。
半分のスピードにすると、0.1秒の出来事が0.2秒になります。それまでひとつに聞こえていた音の中に、つながりや弱まり、間の違いが聞こえてきます。
お手本をスローにする。じぶんの声もスローにする。同じところを行き来して聞く。
大切なのは、スローで聞けるようになることではありません。ふつうの速さでは気づけなかった違いを、いまのじぶんにも気づける大きさにしてみることです。
一度気づけば、ふつうの速さに戻したときにも、「ここだ」と耳を向けられます。
聞こえないから、もっとがんばって聞くのではない。
聞こえないじぶんを、そのままにしない。時間を広げて、じぶんが気づける条件をつくるのです。(*注1)
⚫︎ ふたりのじぶんを使う|気づきをじぶんに返す
リアルタイムで英語を聞き、声にしているじぶんは、その場でじぶんを観察しているわけではありません。聞く、思い出す、声にする。その一瞬の中で動いています。
そのじぶんを、あとから自分がふりかえります。
声を聞き直す。お手本と比べる。前のじぶんとも比べる。違いを書いてみる。聞き取れなければ、スローにして確かめる。
体験しているじぶんと、あとからふりかえる自分。ふたりの「じぶん」を使うことで、その場では気づけなかったことに気づけます。
そして、大切なのはここからです。
「あ、ここが違う」と気づいたら、もう一度声にしてみる。
さっきまで聞こえなかった違いを知ったじぶんが、もう一度、リアルタイムの中に戻っていきます。
聞く。声にする。聞き直す。比べる。気づく。そして、もう一度声にする。
気づきは、そこで終わるものではありません。次のじぶんを変えるためにあるのです。
「ふたりのじぶん」について、こちらのエンパレットノートをごらんください。
(*注1)多くの人の英語耳°プラクティスのTutoringをしていて、筆者がくり返し経験することがあります。何度も熱心にお手本を聞く人でも、「スローにして聞いてみてください」と勧めても、意外なほどスローで聞きません。勧められた時にはしても、また元の聞き方に戻ってしまいます。
理由のひとつは、そのセリフが「何と言っているか」を、すでに文字で知っていることにあります。何度も聞いているので、じぶんはもうその音を知っている、という感覚もあります。スローにすると、かえって音が崩れ、いつものセリフとは違って聞こえます。
でも、速いボールが打てないときに、同じ速いボールだけを何度も打とうとするでしょうか。速度を落として、じぶんの動きを確かめる練習もするはずです。
聞こえないのに、ふつうの速さでくり返し聞こうとする。その背後にも、まだじぶんでは気づいていない「聞き方のクセ」があります。
スローにすることは、ただ速度を落とすことではありません。いつもの聞き方からいったん離れ、じぶんを邪魔している暗黙の前提に気づくためのUnlearningでもあるのです。

⚫︎ 身体(運動)
① 身体全体で声に出す (Vocalize)
② 小分けにしてまとまりにする (Chunk)
③ セリフをビートに乗せる (Beat)
⚪︎ 脳(認知・想起)
④ 瞬間の処理力を鍛える (Process)
⑤ 文字ではなく、情景を思い出す (Recall)
⑥ スローにして比較する (Contrast)
◎ 心(自走・再帰)
⑦ いつもセリフを口ずさむ (Internalize)
毎日まわるしくみ|Recursion × 英語耳°(リアルタイム音声認知の獲得)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion① × 英語耳° 身体を使って音をつくる(Vocalize)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion② × 英語耳° チャンクに分けてつなげる(Chunk))
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion③ × 英語耳° ビートにあわせて音を縮める(Beat)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion④ × 英語耳° 秒内の瞬発力を鍛える(Process)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion⑤ × 英語耳° 文字ではなく、場面を思い出す(Recall)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion⑥ × 英語耳° スローにして比較する(Contrast)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion⑦ × 英語耳° セリフをいつも口ずさむ(Internalize)
作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど
