Empathemian『Chunk』

Chunk the sound. (音をまとまりにする)

英語の音は、単語がひとつずつ、同じようにはっきり聞こえてくるわけではありません。

いくつもの単語が短くつながり、ひとまとまりの音になって流れてきます。この音のまとまりが、チャンク (Chunk) です。

英語耳°を育てるには、文字で見える単語の区切りではなく、耳に入ってくる音のまとまりを、そのまま捉えて声にする練習が欠かせません。

⚫︎ 文字では単語、耳ではチャンク

まず、動画のセリフを聞いてみましょう。

Okay, I’ll give it a try. (わかった、やってみるわ)

文字で見ると、

Okay / I’ll / give / it / a / try

6つの単語があります。

では、音も6つに分かれて聞こえるでしょうか。

実際の音声では、単語が一語ずつ独立して並んでいるわけではありません。いくつもの音が短くつながり、まとまって流れていきます。

文字を見れば、どの単語も知っている。それなのに、音になると聞き取れない。

ここに、文字から思い浮かべる音と、実際に耳に入ってくる音とのギャップがあります。


⚫︎ 単語の区切りは、音の区切りではない

英語を文字で学ぶと、単語はスペースで区切られています。

give / it / a

目には、3つの単語がはっきり見えます。

そのため、聞くときにも無意識に、それぞれの単語に対応する音を待ち受けています。

ところが、話しことばではそうなりません。

give it a

と、前後の音がつながり、短いひとまとまりとして声になります。

単語を知っていることと、その単語を実際の音声の中で捉えられることは、同じではありません。

⚫︎ チャンクは、途切れのない発話区間

チャンクは、音のまとまりであると同時に、ひと続きの発話運動です。

たとえば、That’s the thing.

Articulation:母語の干渉=区切れがはいる

ある人の発話では、That’s|the thing. のように、単語の境目にわずかな間が入っていました。手本では、That’s の最後から the へ、舌や口の動きがそのまま次の音へ移っていきます。(*注1)

挿絵をごらんください。リズムミラーの色粒の隙間は、そのちがいを表しています。

リズムミラーに表れる差は、うまい・下手を決めるための評価ではありません。

一回ごとに少しずつ違ってかまいません。大切なのは、小さな隙間やズレを見つけ、次の一回で少し調整することです。その小さな差分をくり返し減らしていくことが、英語耳°を育てるプラクティスになります。(*注2)

単語と単語の間だけでなく、ひとつの単語の中でも、日本語耳の干渉は、たとえば、problem を「プロブレム」と言う場合に、逆に余分な母音が入ります。

音のない隙間でも、余分な音でも、共通するのは、次の音への動きに余分な時間や音が入ることです。

「チャンクは音のまとまり」という時、その意味は、ひとつの音から次の音へ、発話の動きがひとまとまりになっていることです。日本語のリズムで区切れが入ると、英語耳には、聞きなれない途切れに聞こえることもあります。

うまいか下手かではありません。まねる、すなわち、忠実に似せる(=再現する)ことは、おなじような音の連なりがじぶんの耳に来た時に「とり逃さない=聞き取れるようにする」練習なのです。

⚫︎ 音は、短くなる

もうひとつ、大きな違いがあります。

英語の音は、文字から想像するより、ずっと短くなることがあります。

英語は、すべての音を同じ長さ、同じ強さではっきり出すわけではありません。短く弱くなる音もあれば、前後の音とつながって、単独では捉えにくくなる音もあります。

ときには、「そこにあるはずの音が聞こえない」と感じるほど短くなります。

文字から一語ずつ音を思い浮かべていると、この短さについていけません。

ここに、日本語耳と英語耳の大きなギャップがあります。

「知っている単語なのに聞こえない」のは、耳のよしあし(脳が音をどれだけ速く、細かく処理できるか)の問題ではありません。頭の中で待ち受けている音と、実際に流れてくる音の姿が違っているのです。

⚫︎ 音のまとまりを、そのまままねる

そこで、単語ではなく、チャンク を単位にします。

聞こえてきた短い音のまとまりを、ひと息で捉え、そのまま声にします。

長くてまねられなければ、小さく分けます。
半分にする。それでも長ければ、さらに半分にする。
短いチャンクなら、聞いた音を耳に残したまま、すぐに声にできます。

⚫︎ 何度も聞く。
⚫︎ すぐ声にする。
⚫︎ うまくいかなければ、もう少し小さくする。

できたチャンクを、今度はつなげます。目的は、分けてまねられるようにし、もう一度つなげて、もとの音の流れに戻すことです。

Stop reading words. (単語を読まない)

⚫︎ 単語を、ひとつずつ読まない

チャンクに分けるといっても、文字を見ながら、

I’ll / give / it / a / try

と、一語ずつ発音する練習ではありません。

それでは、文字の区切りを声にしているだけです。

手本を聞いて、どこまでをひと息の音として捉えられるか。そのまとまりを、長さも、つながりも含めてまねます。

文字に音をあてるのではなく、耳から入ってきた音を声にする。

チャンクは、そのための単位です。

Put the chunk together. (チャンクごとに小分けにする)

⚫︎ 小さくして、またつなげる

一度に扱える音には限りがあります。

長いセリフを一度にまねようとすると、前半を覚えているうちに後半が抜けたり、聞こえた音ではなく、知っている単語を頼りに言い直したりします。

だから、小さくします。

耳で捉えられるところまで小さくする。
すぐ声にできるところまで小さくする。

そして、できたらつなげる。

小さくして、声にする。
つなげて、もう一度声にする。

この往復をくり返します。

チャンクに分けることで、聞いた音を文字に置き換えず、音のまま捉えて声にする時間をつくります。

⚫︎ なぜ、こんなに短くなる?

なぜ英語では、いくつもの単語がこんなに短くなり、ひとまとまりにつながるのでしょうか。

ただ速くしゃべっているからではありません。

英語の音には、強く長く出るところと、その間で短く縮むところがあります。その長短をつくっているのが、英語のリズムです。

チャンクをただ短く区切るだけでは、英語らしい音の流れにはなりません。

ここで、いちばん根源的なところまでさかのぼってみましょう。

私たちがことばを身につけるずっと前、まだ胎内にいたころから、声の強弱や長短、くり返されるリズムを聞いてきました。ことばを単語として知るより前に、リズムを身体で受け取っていたのです。

音より先に、リズムがある。

次のRecursion③ ビートにあわせて音を縮める(Beat)では、このことばの根っこにあるリズムから、英語の音が短くつながるしくみをたどります。

(*注1) 「つながる」といっても、前の音を出し終えてから次の音を足す、という意味ではありません。ひとつの音を出している間に、口や舌はすでに次の音へ向かって動いています。That’s the thing. なら、That’s の最後の音と the の最初の音を別々に出してつなぐというより、That’s の最後の動きの中に、すでに the への動きが入っています。

「順番に2つの音を出す」のではなく、「次の音までを、ひとまとまりの動きとして声にする」と捉えると、まねやすくなります。チャンクは、耳で音声を認知するときの「音のまとまり」であると同時に、声にするときの「発話運動のまとまり」でもあります。聞くことと声にすることの両方を、同じチャンクで捉えることがポイントです。

(*注2) リズムミラーやシードに表れる再現度は、テストのような5段階の優劣評価ではありません。練習の仕方や、いまのじぶんの現在地点を映す鏡として捉えるものです。一回の音声に「100点」「合格・不合格」という固定的な答えがあるわけではありません。ネイティブの発話にも一人ひとり違いがあり、同じ人でも毎回少しずつ変わります。そのため、ある一回がSproutで、別の回がLeafやFlowerになることもあります。

大切なのは、一回ごとの上下ではなく、くり返したときにどのあたりに集まるか、そのばらつきです。たとえば10回のうち7回ほど同じ再現度になるなら、そこが今のじぶんの現在地点と考えられます。そして、その位置はプラクティスによって変わっていきます。

エンパシームが映しているのは、その人に固定された「良い・悪い」ではなく、自己調整によって変えられる小さな差分です。その小さなズレを見つけ、少しずつ調整することが、やがて聞く・話す力の大きな変化につながります。シードの評価については、こちらをごらんください。

⚫︎ 身体(運動)
① 身体全体で声に出す (Vocalize)
② 小分けにしてまとまりにする (Chunk)
③ セリフをビートに乗せる (Beat)

⚪︎ 脳(認知・想起)
④ 瞬間の処理力を鍛える (Process)
⑤ 文字ではなく、情景を思い出す (Recall)
⑥ スローにして比較する (Contrast)

◎ 心(自走・再帰)
⑦ いつもセリフを口ずさむ (Internalize)

毎日まわるしくみ|Recursion × 英語耳°(リアルタイム音声認知の獲得)

⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion① × 英語耳° 身体を使って音をつくる(Vocalize)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion② × 英語耳° チャンクに分けてつなげる(Chunk))
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion③ × 英語耳° ビートにあわせて音を縮める(Beat)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion④ × 英語耳° 秒内の瞬発力を鍛える(Process)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion⑤ × 英語耳° 文字ではなく、場面を思い出す(Recall)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion⑥ × 英語耳° スローにして比較する(Contrast)
⚫︎ 毎日まわるしくみ|Recursion⑦ × 英語耳° セリフをいつも口ずさむ(Internalize)

作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど