
Practice getting back to yourself.(ふだんのじぶんに戻る練習)
カリフォルニア在住のSomniQ CTO ヒデさんは、こう言います。
「娘がローカルのアカデミーで練習する時も、USジュニア代表候補に選ばれてトレーニングする機会をもらった時でも、コーチからメンタルが強いとか弱いとかの批評を聞いたことがありません。日本では、テニス中継の解説の方々をはじめ、ジュニアのコーチや親がすぐにメンタルについて評価します。」
「そもそもメンタルが強いなんていうことはなく、レジリエンスをプラクティスしている、ということだと思います。日々プラクティスしているかどうか。ところが、それを結果だけ捉えていうものだから、どうしていいかもわからないままになる。そして本人はメンタルが弱いからダメなんだと思ってしまう。」
メンタルが〇〇とみな口を揃える、その環境に影響されているのではないか?
「メンタルが強い」。あくまで、結果を評した比喩。ところが、いつの間にか、話が逆になってしまいます。
⚪︎ メンタルが強い → だから、勝った
⚫︎ メンタルが弱い → だから、負けた
勝った人は「メンタルが強い人」になり、負けた人は「メンタルが弱い人」になる。
勝敗という「結果」から、「原因」をつくりあげてしまうのです。
弱いメンタルというレッテルを貼られた人はどうしたらよいのでしょうか?
メンタルを強くするには、何を練習すればよいのでしょうか。
Where is your mental?(メンタルってどこにあるの?)
テニスに限りません。サッカーでも、野球でも、受験でも、仕事でも、接戦で負けると「メンタルが弱かった」ということばが聞こえてきます。
それは、もはや説明ではありません。私たちが無意識に受け入れている暗黙の「前提」です。
「勝つには強いメンタルが必要だ。」
「負けたのはメンタルが弱いからだ。」
解説者から。指導者から。親から。友人から。くり返し、くり返し、そうしたことばをくり返し聞くうちに、本人も「勝敗はメンタルの強さで決まる」という見方を身につけてしまいます。
じつは、勝負の最中、脳には二つのモードしか、ありません。攻めるか、避けるか。この二つのモードは同時には成り立ちません。(*注)
避けるモードに入ると、細やかな制御が乱れます。スキルが消えたのではなく、発揮できる状態ではなくなっただけです。
試合のまっただ中で、「落ち着こう」「メンタルを強く持とう」と念じても、脳と身体は勝手に動いてしまいます。
「メンタルが弱いから負ける」のではありません。「自分はメンタルが弱い」という思い込みこそが、避けるモードを誘発します。
人はプレッシャーの中で、新しいことばを考えることはできません。咄嗟に出てくるのは、毎日くり返してきた内なることばだけです。
だから、ふだん声に出していることばが大切なのです。
育てるべきは「強いメンタル」ではない。立ち直るプラクティスです。
Stay on.(そのままで)
作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど
(*注)攻めるモード(Approach)ではドーパミンが、避けるモード(Avoidance)ではコルチゾールが分泌されます。避けるモードに入ると、血流は細かな運動を支える神経系より、大きな筋肉を素早く動かすシステムへ優先的に配分されます。テニスラケットの面を数ミリ調整するような、繊細な制御が乱れやすくなる理由はここにあります。この切り替えを担うのが、脳内の扁桃体(amygdala)が重要な役割を果たします。扁桃体は危険を素早く検知し、「Fight or Flight(戦うか、逃げるか)」と呼ばれる生存反応を引き起こします。あらゆる動物が生存のために備えてきた、最も古い危険検知システムです。これは意識より先に身体が反応する、人間に備わった基本的なしくみなのです。だから勝負の場で新しい自分になろうとしても間に合いません。プレッシャーの中で出てくるのは、毎日くり返してきたプラクティスです。(詳しくは以下のエンパレットノートをごらんください)
「レジリエンス」シリーズ:
⚫︎ 「折れない・負けない・あきらめない」とは?|レジリエンス ①
⚫︎ 「メンタルが弱いか、弱いか」ではない|レジリエンス ②
⚫︎ 勝者は、敗者の自覚から|レジリアンス ③
⚫︎ いつものじぶんをつくる|レジリエンス ④
⚫︎ 心の免疫力をつくる|レジリエンス ⑤
⚫︎ いのちある限り、回復できる|レジリエンス ⑥
⚫︎ 心をしなやかにする手入れ|レジリエンス ⑦
