
You lost the moment you switched from approach to avoidance. (相手に向かうモードから、回避するモードへ切り替わった瞬間に負けた)
オリンピック選手やプロスポーツのトップアスリートを指導しているメンタルトレーナーのDawn Grantさんは、こう言います。
「テニスでも、バスケットボールでも、ゴルフでも。勝負で負けるとき、実は相手に負けるのではありません。回避モード(Avoidance)へ切り替わった、その瞬間から負けが始まるのです。」
脳科学では、人のパフォーマンスには、大きく二つの状態があります。
⚪︎ Approach(向かう):ドーパミンが分泌される、報酬を感じるモード
⚫︎ Avoidance(避ける):コルチゾールが分泌され、脅威を検出するモード
Approachでは、「ここへ打とう」「ここへ投げよう」と行動へ意識が向かいます。
一方、リードを守ろう、失敗しないようにしよう、ミスを避けよう、と考え始めると、脳は危険を検知します。
その中心となるのが、扁桃体(amygdala)です。
Fight or flight. The fundamental (戦うか、逃げるか。本能を司る)
扁桃体は、危険を察知し、瞬時に「戦うか逃げるか」(Fight or Flight)を引き起こす中枢です。いわば、脳が「怖い」警報を出すのです。
これは、あらゆる動物が生き延びるために身につけている、最も古い生存システムです。
もちろん、人間も例外ではありません。
危険を感じれば、逃げるか、戦うか。そのために身体は瞬時に切り替わります。この時、副腎からコルチゾールなどのストレスホルモンが放出されます。
身体は「正確に動くこと」よりも、「生き延びること」を優先する状態へ切り替わります。
すると、血流は、細かな運動を支える神経系よりも、大きな筋肉を素早く動かすためのシステムへ優先的に配分されます。
その結果、テニスラケットの面を数ミリ調整したり、ゴルフクラブを繊細にコントロールしたり、フリースローを正確に放つような動きが乱れやすくなります。
細かな運動を支える神経や筋肉の働きは乱れ、ふだんなら自然にできる動きができなくなるのです。
スキルが消えたのではありません。スキルを発揮できる状態ではなくなったのです。
Approach と Avoidance は、同時に優位になることはできません。
向かうモードが優位になるか。
避けるモードが優位になるか。
だから、勝者は必ずしも最も技術が高い人とは限りません。より長く、Approachの状態を保てた人なのです。
「守る」ことがいけないのではありません。ディフェンスは勝つための必要条件です。リードを守る戦術も必要です。問題は、守る戦術ではなく、脳が「逃げるモード」へ切り替わることです。
Build the practice within.(じぶんの内側に、向かう状態をつくる)
では、どうしたら、そのようなモード切り替えをコントロールできるのでしょうか?
その秘密は、ふだんのプラクティスにあります。
試合のまっただかにいくらがんばろうとしても、脳と身体が勝手に動いてしまうのですから。
決して「メンタルが弱いから負ける」のではありません。そのような思い込みがあると、それこそ、怖い・逃げるモードが発動してしまいます。
人はプレッシャーの中で、新しいことばを考えることはできません。
出てくるのは、毎日くり返してきたインナースピーチです。
だから、ふだん声に出していることばが大切なのです。
Get back to your practice. (いつものじぶんに戻れ)
作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:Dawn Grant – The Mind Behind The Methods、以下のエンパレットノートなど
