Empathemian『In Fahrenheit』

Learn to switch.(切り替えを学ぶ)

ファーレンハイトをご存知ですか?

気温の測り方には、主にふたつあります。
ひとつは、セルシウス(℃)、もうひとつがファーレンハイト(℉)です。

気温とは、空気分子の状態を表すものさしです。
そのものさしの発明者が、スウェーデン人、アンダーシュ・セルシウスと、
ドイツ人(当時のリトアニア・ポーランド)のガブリエル・ファーレンハイトです。
それぞれ、漢語に訳されて、摂氏、華氏と名づけられました。
さしずめ、セルシウスさんの目盛りとか、ファーレンハイト方式といった意味です。

200年ほど前に考案された方法がいまでも使われています。
といっても、ファーレンハイトを日常的に使うのは全世界でも、アメリカといくつかの国。

℃:水が凍る(凝固点)ゼロ℃〜お湯が沸く(沸点)100℃の気温を100等分した目盛り。

℉:水が凍る(凝固点)32℉〜お湯が沸く(沸点)212℉の気温を180等分した目盛り。


日本では、ファーレンハイトは、まったくピンときませんね。(注1)
なぜ、そんな目盛りなのかと、疑問に持つ人も多いでしょう。

ファーレンハイトは、日常の生活の気温が0〜100のスケールで、ざっくりと天候を表します。
慣れると感覚的にわかりやすい数字です。

日常の生活は、ふだん50~80ぐらいの範囲で、それより上か下か。
・ 70°Fはちょうどよく、80°Fは暑い。
・ 60°Fは上着を着る。50°Fはもっと着る。
・ 日常生活で出くわす極寒い朝でも30°F。
・ 記録的な現象でも、0°F 周辺。
・ ふだんの生活に、マイナス表示はめったに出てこない。(注2)
・ 体温がだいたい100 (96ぐらい)。
・ つまり、50あればよく、0はとても小さく、100はとても大きい、という指標。

ところで、こんな話をよく聞きます。

「長年アメリカに住んでいても慣れませんね、ファーレンハイトには。」

なぜ、慣れないか?

心の切り替えがしづらいからです。

気温は、体験と結びついた肌の感覚です。
こどもの頃から慣れ親しんだものさし。
切り替えるきっかけがないと、なかなか変えようがありません。

切り替えるとは、Unlearnすることです。

学び直すこと自体は、少しもむずかしくありません。
別のものさしをつかう、というだけです。

何がむずかしいのでしょうか?
いえ、何が切り替えをむずかしくしているのでしょうか?

それは、無意識的な心です。
そのつもりになれば、いつでもできるはずなのに、無意識的に、切り替えようとしていないからです。

「長年アメリカに住んでいるけれど、車の左ハンドルには慣れないね。」という話はききません。
切り替えないかぎり、暮らせないのですから。

℃に換算すれば、よい。
ものさしを切り替えてしまう必要がない。
気づかないうちに、その漠然とした気分がバリアになっているのです。

それではいけない、という話ではありません。
℃表示の方が心地よいのだから、変える必要がないのなら、まったく問題ありません。
どちらのものさしを使うのも自由。

Unlearning = 心の切り替えモード
その気になれば、いつでもできます。
実は、たったそれだけの、シンプルな話なのです。

ここに、新しいことを学ぶことについての貴重なヒントがあります。
unlearnすること、つまり心の切り替えは、学びの必須条件だということです。
それは、じぶんだけに託されている自由。
他人が直接、じぶんのものさしを切り替えることはありません。

習慣をつくるヒントでもあります。
換算している間、つまり意識している間は、習慣はまだ身についていません。
無意識的にできるようになって、今度はそれを意識(自覚)できるようになった時、習慣が定着するのです。

古いものさしを捨てて、新しいものさしに切り替えるには、勇気がいります。
勇気とは、考え込んだり、頑張ったりする意識ではありません。
ひらきなおる、きっかけのことです。
ただし、そのきっかけはじぶんでつくる必要があります。
じぶんしかできないことをするから、勇気と呼ぶのです。

Remember Fahrenheit. An unlearning example.(ファーレンハイトを思い出そう。切り替えの実例。)

じぶんの身のまわりを測るものさし。
ものさしの切り替えこそ、すべての学びに共通する技です。

あいだみつをさんのことば。

他人のものさし、じぶんのものさし、それぞれ寸法がちがうんだね。


出典・参照:『毎プラガイド』、あいだみつを『人間だもの』

(注1):日本でも昭和時代には、℃(摂氏)と℉(華氏)の両方を表示する寒暖計がありました。

(注2):現在、アメリカの北部・東部は、吹雪で極寒の状態。マイナス40度の気温。マイナス40度とは、セルシウスでもファーレンハイトでも、マイナス40度。日常の生活温度ではない記録的な寒さです。