おどろきに心をひらいて

木下清一郎は、「心の働きの原理」について、このように説きました。

「心の世界の基本原理は「自己回帰」とそれに由来する「抽象作用」である。心の体系がつくられるには、何よりも情報が流れ去ることなく、系のなかにとどまることが必要である。これが情報の自己回帰運動であり、それは記憶の働きとしてあらわれる。記憶に先立って照合のための想起があり、その結果をふたたび新しい記憶として記銘するという一連の循環の過程からなりたっている。つまり、情報の自己回帰。

自己回帰という閉じた回路をもつことは、情報が循環して自分自身に言及することを可能にし、それによって本来なら流れさるはずの情報をひとつの場に閉じ込めて、そこで統合を果たすきっかけをつくったといえる。これが、基本原理としての抽象である。

ドレミファソラシド、8つの顔

小学二年生の時、私は嬉々としてピアノのレッスンに通っていました。先生が産休をとり、別の新しい先生に紹介されました。そちらに通い始めたある日のことです。部屋で先生を待つ間、私はある計画を実行しました。家のピアノでも試していたので大丈夫。成功を目に浮かべて、期待を膨らませました。

それは、ピアノの練習曲ではなく、先生を喜ばせる、あるアイディアでした。ピアノの鍵盤「ドレミファソラシド」にひとつひとつ顔をつけるのです。ある日、先生がピアノを引く時の鍵盤のあがりさがりが、ドレミファソラシドという小人に見える「ひらめき」でした。小さく丸く切り取った広告の裏紙に描いた8人の顔。鍵盤の上に並べ、そっとふたを締めます。開ける瞬間の「驚き」を想像してうれしくなりました。

1回ずつの6000回

庭師の大野さんと、こんな会話がありました。

りっこう:こんにちは。ぼくも登りました。2度目です。
おおの:ああ、それはそれは。ありがとうございます。
り:ありがとう、といわれたのは初めてです。
お:今日でね、5,670回です。
り:えー?!ゴセンナナヒャクですか?
お:そうです。毎日登っていますから。
り:りゅうがい山のあの坂を毎日ですか!?
お:そうです。山頂から一望に見渡せますからね。
り:いつ登るんでしょう?
お:朝日を見て、夕日を見て。
り:1日2回登るんですか?
お:はい。カメラもってね。