Empathemian『ことばの習得は内語化』

Externalize inner speeches to internalize them.(内語を外に出して身につける)

インナースピーチ(内語)は言語の基本機能すべてに関与しています。
読む・書く・話す・聞くという行為がスムーズにできるのは、心の中でことばを使うことができるからです。

インナースピーチは、ものごとを思い出そうとする時、自然に働きます。
あれ、何だったっけ? 何と言っていたっけ?という、何気ないセリフ。
声のセリフが頭の中にこだますることで、思い出せます。
会話を思い出すことは、典型的なインナースピーチです。

・ことばを覚えるには、内語が不可欠。
・何か思い出すには、内語が必須です。

実は、学習の要なのです。
文字を読んで覚える時、脳のワーキングメモリが働きます。
2秒ほどの時間内で「音の連なり」に変えて処理します。(*注1)
これもインナースピーチです。

ことばを覚えるとは、音声を心の中に呼び出して復唱することです。
インナースピーチという媒体を使って、リハーサルするわけです。
くりかえし、ふりかえり、つながりをつける営みが、ことばの習得です。
別のことばで表現するなら、じぶんの中にインナースピーチ化して定着させることです。

母語(日本語)では、インナースピーチは無意識的な出来事であるため、気づきにくいところもあります。
そこで、外国語の習得は、インナースピーチ体験の典型的な例になります。
なぜなら、外国語(たとえば英語)では、じぶんの心の中は、まだ白紙状態だからです。
第二言語の習得は、ほとんどゼロの状態から、短いセリフを身につけ、内面化(internalize)していくプロセスです。

それは母語でも、気づかぬうちに身につけるのとおなじ道筋です。
インナースピーチ化することによって、じぶんの思考として、意識できるようになります。

セリフを声に「出す」ことが「入れる」こと

エンンパシーム「英語トレイル」は、インナースピーチ化の原理をメソッドにすえたプラクティスです。
手本のシード(2秒のセリフ)を思い出し、それをひと息でアウトプットします。
いったん内語化して、声のことばにするプロセスです。
文字を読むのではなく、手本の声を思い出し、いったん内語にして(おぼえて)出します。

声にして出すことが、しっかり入れることになります。
「身につける」とは、じぶんのインナースピーチに定着させることです。(*注2)

「声」に出すことで、ことばは内語化します。
そもそも、ことばは声で紡ぎ出され、音声の連なりをやりとりするものだからです。

Empathemian『Extracted Seed As Medium』

Inner speeches are short, simple, and mostly subconscious.(インナースピーチは、短く、やさしいことばで、そのほとんどは無意識的)

インナースピーチには大きな特徴があります。
短いことです。
1-2秒という短い時間の、ひとまとまりのことば。
つまり、セリフやフレーズです。

なぜかというと、長いと「覚えられない」からです。
覚えられないものは、くりかえすことはできません。
何度も何度も、日常的に、無意識的に浮かび上がるものは、決して、長い文ではありません。

短く、平易なことばがいくつか連なって、シンプルなセリフなのです。
単語ではなく、まとまりのあるフレーズです。
なぜなら、単語だけでやりとりをすることはないからです。
短いまとまりがさらに組み立てられて、より複雑な思考・表現になります。

インナースピーチは、2秒以内の短くて、やさしいことばのセリフ。
じぶんの心の中で、じぶん自身をガイドする、無意識的に、自動的にでてくることば。
静かにひと息をついて、落ち着いた時に、声にだしてみるとわかります。

第二言語(英語などの外国語)のプラクティスは、単にそのことばの知識を記憶することではなく、インナースピーチ化するという心の働きの本質を知り、実感することです。
すでに身につけている母語(日本語)では、なかなか気がつかない、いわば絶好のチャンスなのです。

Internalize Speech You Need(ことばを内面化)

インナースピーチ (4) 声の身体運動が内語化する

インナースピーチ (2) 内語は意識のとびらへもどる

出典・参照:『英語トレイル」ガイド、以下の論文、エンパレットなど

(*注1)Baddeley と Hitch (1974) は、内語がもつ記憶の機能(ワーキングメモリ)を明らかにしました。電話番号やものの名前を瞬時に覚える時など、作業記憶にいったん留めたものをリハーサルする時に「音の連なりに」変えています。脳内処理で「音韻ループ」が働くのです。エンパレットシリーズ「ことばを身につける」で詳しく解説しています。

ことばを身につける ①「ワーキングメモリは、心の玄関」

(*注2)第二言語の習熟度(proficiency)とInner speechの使用度には強い相関関係があります。英語が上達した人は、頻度高く、インナースピーチを使います。ネイティブとおなじように、心の中でも短いセリフを頻繁に出し入れするようになれることが習熟する、ということです。その一方、初心者から中級者はインナースピーチ化が起きていません。ネイティブとおなじように、セリフを身につける(おなじリズム、速さ)で出し入れするプラクティスが進む過程で、ことばを使うスキル、センス、姿勢が身についていくのです。

Brian Tomlinson『Assisting Learners in Orchestrating their Inner Voice for L2 Learning』

María C. M. de Guerrero『Inner Speech as Mental Rehearsal The Case of Advanced L2 Learners』

Self-Talk(ポジティブ思考よりも、じぶんに気づくこと)

人生は2秒単位でできている③(思考の単位)