The mind is an activity, not a repository.(心は活動。貯蔵庫ではなく)(注1)
しずかさや 岩にしみいる 蝉の声 (松尾芭蕉)
岩にしみ入るほどの、盛大なセミの声。
それなのに、なぜ「静かさ」?
セミの大群が鳴いていた夏が去ったからです。
思い出すことで、閑かさが感じられるのです。
想像の音が、静かな心を浮かび上がらせます。(注2)
今年の夏、アメリカ北東部の木々は、鈴なりのセミで覆われました。
17年ごとに現れる、周期ゼミ(Periodical Cicadas)です。
17年間、幼虫として土の中で暮らし、最後の数週間を地上で過ごすのです。
木の下に縦型のトンネルを堀り、木の汁を吸って少しずつ成長します。
17という数は、素数。
割れる数がないので、長い間、他の生き物と地上に出る周期が重なりません。
周期のちがうセミとの、交雑のバッティングを避ける知恵。
その数、数千億にものぼると言われます。
想像を超える数?
いいえ、想像することを忘れているだけかもしれません。
地球の生きる生命の大半は土の中、海の中にいます。
ウィルスや細菌は目に見えませんが、セミの幼虫は目に見える大きさです。
夏は過ぎ、地中で新しい命のサイクルのはじまったセミが、あなたの足下にも。
ファーブル博士によれば、セミは目がよい(5つ目がある)けれど、耳はそれほどよくない?らしいです。
なるほど、大音量でも「しずかに」に歌っているつもりなのかもしれません。
Fun to imagine a world beneath. (地中の世界を想像する楽しみ)
Fun to Imagine (7) [想像の行為がどこでもドアをつくる]
Fun to Imagine (5) 水のネットワーク② [密林の奥底から想像する]
出典・参照:アンリ・ファーブル『昆虫記』、奥本大三郎『ファーブル昆虫記』
Public Domain Review: Fabre’s Book of Insects
(*注1)アンリ・ファーブルのことば
(*注2)エンパレット心の世界は五感を結いあわす[さかさまにすると誤解にも気づく] をごらんください。