Empathemian 『Inner speech expressed』

「考えをうまくことばで表現できない」などと、よく言いますね。ただ、このように言う時、発話に先立って思考があるようにも聞こえます。

信原幸弘さんはこう言います。

考えるとは、発話すること。

内語うちごをおこなうことが思考。

内語とは、声なき声で語られた発話、いわば音量ゼロ出力の、内なる発話 (Inner Speech) です。

「意識的な思考過程とは、発話または内語を伴う思考過程であり、しかもその発話や内語が意識される思考過程である。無意識的な思考過程は、発話も内語も伴わず、信念や欲求のような思考それ自体を活用してなされる思考過程のこと。

思考というとき、心は脳だけではない。心の働きの中には、脳の中ではなく、むしろ主として外部の環境のなかで展開されると考えるべきものがある。内語の場合も、思考は脳のなかで行われるわけではない。

筆算で掛け算を行うとき、脳の中でおこなわれるのは、ひと桁の掛け算と足し算を可能にするような興奮パターンの変形だけであり、構文論的構造をもつ表象の操作は行われない。そのような表象の操作としての掛け算が行われるのは、脳の中ではなく、紙の上。暗算による掛け算は、筆算による掛け算を想像の中でおこなったものである。」

想像することは、ふりをすること。
紙の上の数字を視覚的に想像することは、紙の上に書かれた数字を「見るフリ」をすること。

心は、身体と脳と環境からなるシステム。
ふるまいを演じることが、想像であり、心の働きを起こしているのですね。内語をエンパシームに出してみましょう。

出典:信原幸弘『考える脳・考えない脳』