
Stay humble. (謙虚な心で)
シリコンバレーで、山中伸弥さんのお話を聞く機会がありました。(*注1)
山中さんは、「26才の時に父を肝炎で亡くした、その時の無力感」が科学者としての出発点であり、より所になったとお話になりました。ミシン開発者だったお父さまは、病床で、家業を継がずにサイエンティストになることをすすめたそうです。そのお父さまの死が外科から研究に向かわせたのだ、と。
山中さんが大切にしていることばは、二つあるそうです。
おかげさま。
身から出たサビ。
よいことは他人のおかげ。うまく行かないのは自分のせい。
お母さまから受け継いだそのことばを、山中さんはシンプルなモットーとして大切にしている、とお話しされました。
会の冒頭で、司会の方が、山中さんの人柄に触れて、3つのことばをあげました。
Humility, Compassion, Resilience.(謙虚、思いやり、折れない心)
多くの質問に、ていねいに、正直にこたえる山中さんの姿に、ことばの重みが感じられました。

Be giving. (感謝の心で生きる)
奇しくも、私にも似たような体験があります。
成人する前から、父が他界するまでの5年間あまり、半身不随・構音障害で病に伏した父を看病する日々でした。(*注1)
父の手を取り、「ひらがな文字盤」で会話した毎日の体験が、いまのじぶんに直結しています。
父の手と私の手が一体になって、ひらがな文字盤をなぞりました。
ひ・と・の・た・め・ て・い・ね・い・に・い・き・よ
それが、父の最後のことばでした。
そのことばは、父の手の感触と、微かな息づかいとともに、私の心に深く刻まれました。
素手のありがたさ。
息に宿ることばのありがたさ。
山中さんのお話に触発されて、そのことをあらためて噛みしめました。
無力感も、希望に変えられる。
いのちのありがたさを、心から信じることで。
ありがたさが、折れない心をつくる—
出典・参照:坂口立考『海の宮』「英プラの路をゆく」、「共感の精錬」、「毎プラ 水・空・いのち」、以下のエンパレットなど
(*注1)(山中伸弥氏 講演、Silicon Valley Japan Platform、2018年7月5日)
(*注2) 構音障害(dysarthria)は、神経・筋肉の損傷が原因で発声発語器官のどこかに運動障害が起こり、うまく話せない状態を言います。 言語を正しく理解し、使用できるけれども、話せない(発声できない)障害。構音(articulation)とは、舌、アゴ、口全体の筋肉運動で、発声する音のこと。
声は、ひと息ごとに、息を声にかえてで出力する(=articulate)ことばが、単位となり、つながりを生み出す営みです。声によって音・リズムと想像イメージが結ばれます。声は、心の働きを担う中心。
