
We assume we understand.(つい、わかった気になる)
「わかった。」
そう思っても、たいていは、まだぼんやりしています。それがふつうです。
「わかる」は、一度に起きることではありません。体験を重ねながら、ぼんやりしていた輪郭が、少しずつはっきりしていくプロセスです。(*注1)
ところが、私たちは、その流れにそって「わかる」機会を、あまり与えられません。
⚪︎わかりましたか?
⚪︎まだ、わからないの?
⚪︎説明、わかったよね?
そう聞かれると思えば、「まだ、よくわかりません」とは言いにくいものです。
⚪︎ま、いちおう。
⚪︎なるほど。
⚪︎わかった、わかった。
まだぼんやりしていても、じぶんで「わかった」ことにして先へ進みます。
これは、人に聞かれた時だけではありません。本を読んでいても、話を聞いていても、何かをやっていても、「だいたいわかった」と思ったところで、じぶんから区切りをつけます。
つまり、「わかった気グセ」は、じぶんの頭の中でも起きています。まだ途中にいるのに、「ここはもうわかった」として、次へ進む。脳が先回りして、嫌な気分を回避するからです。
そうやって、せっかくの体験を、反芻しないまま流してしまうのです。
Trace your path. (じぶんの軌跡をたどる)
「わかった」で終わらせずに、いったん、じぶんがしてきたことをたどってみます。
⚫︎どんなふうにしたか。
⚫︎どこでつっかえたか。
⚫︎どこが気になったか。
⚫︎何をやり直したか。
⚫︎前と何が変わったか。
頭の中で「わかったかどうか」を考えるのではありません。じぶんが実際にしたことに戻ります。
体験は、そのままにしておけば、次の体験に押されて流れていきます。でも、少し戻ってたどると、さっきは気づかなかったことが見えてきます。
⚫︎前と同じところでつっかえた。
⚫︎5回目以降、少し違ってきた。
⚫︎じぶんの課題はこの辺なのかな。
これが
反芻とは、同じことを頭の中で何度も考えることではありません。一度経験したことを、もう一度たどり直して、そこから受け取れるものを増やすことです。
そうすると、ぼんやりしていたじぶんのふるまいに、少しずつ輪郭がついてきます。
Write one line. (1行しっかり書く)
「気づいたことがあったら、書こう。」
そう考えがちです。でも、話は逆です。
気づいたから書くのではありません。書こうとすることで、気づきやすくなります。
頭の中では、「なんとなくわかった」「こんな感じだった」で済ませられます。ところが、一行書こうとすると、それではことばになりません。
⚫︎何が?
⚫︎どこが?
⚫︎じぶんは、どうだった?
⚫︎何が前と違った?
さっきの体験をもう一度たどり、そこからひとつ選び、じぶんのことばにしなければなりません。
具体的に、じぶんに聞く。そのことばを書くという行為が、ぼんやりしていたものに輪郭をつけます。(*注2)
うまく書くことでなく、じぶんにたずねるプラクティスなのです。
書いてみて、気づけることがあります。
⚫︎ここまでは言えるのでは?
⚫︎ここから先は、まだよくわからない。
⚫︎やっぱりじぶんは、ここが気になっていたんだ。
一行、しっかり書く。それが、自覚へ導いてくる道になります。
Apply the feedback.(アドバイスどおりにやってみる)
書いて、じぶんで気づく。そこに、外からフィードバックが返ってくることがあります。
フィードバックは、わかるために読むだけではありません。ひとつ受け取ったら、やってみる。
すると、また新しい体験ができます。
その体験を、またふりかえる。
また一行書く。
また気づく。
書く → 気づく → やってみる → また書く。
この往復が続くことで、じぶんのふるまいが少しずつ見えるようになります。
自覚とは、いちど気づいて終わることではありません。
気づきを次の行為に返し、その行為から、またじぶんに気づいていくことです。
Awareness grows by feeding back into action.(気づきを行為に返すことで自覚が育つ)
まとめ
❶ 「わかった」で終わらせず、じぶんの軌跡をたどる
❷ 反芻して、じぶんのふるまいをもう一度捉える
❸ 気づいてから書くのではなく、一行書くことで気づく
❹ 気づきやフィードバックを次の行為に返し、またふりかえる
作(文・挿絵・声に出すことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど
(*注1) 「わかる」には、全体をつかむ、違いを見分ける、脈絡をつかむ、規則を見つける、じぶんのことばに置き換える、実際にやってみるなど、いろいろな働きがあります。最初から、そのすべてがはっきりしているわけではありません。「何がわかりましたか?」と聞かれても、うまく答えられないことがあります。「何がわかりませんか?」なら、なおさらです。まだわからない時には、何がわからないのかも、よくわからないからです。何度かやってみる。前の体験と比べる。ことばにしてみる。すると、「ここまではわかる」「ここがまだわからない」という境目が、少しずつ見えてきます。何がわからないかがわかることも、「わかる」プロセスの一部なのです。
(*注2) じぶんの認知やふるまいを、もう一度じぶんで捉える働きは「メタ認知」と呼ばれます。ただし、「ああ、メタ認知ね」とことばを知ることと、実際にじぶんのことに気づくことは同じではありません。わかっていることは、ことばにする、形にする、実際にやってみるなど、何らかの行為として外に表すことができます。反対に、ぼんやりとしかわかっていないことは、じぶんのことばにしようとすると、うまく形になりません。だから、十分にわかってから書くのではありません。書くという行為によって、ぼんやりしていたものを外に出してみる。すると、じぶんが何をわかっていて、何がまだはっきりしていないのかも、じぶんに見えやすくなります。
(*注3) 英語耳°トレイルでは、声に出したセリフを「シード」として残し、一行のメモを書き、「水やり」をすることができます。そこにアドバイスが返ってきたら、読むだけで終わらず、次のプラクティスで実際に試します。すると、新しい体験が生まれ、それをまた書き、また気づく。この「じぶんから働きかける→寄り添いが返る→もう一度やってみる」という循環が、Empathy Interfaceのしくみです。
じぶんを動かすしくみ|Self-Agency 7つの実践
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ① 自発(はじめる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ② 自助(じぶんを助ける)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ③ 自信(やってみる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ④ 自省(ふりかえる)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑤ 自問(問いを持つ)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑥ 自覚(じぶんに気づく)
⚫︎じぶんを動かすしくみ|Self-Agency ⑦ 自走(明日につなぐ)
