思いと姿勢のあるプラクティスの成果

It all comes back to you.(すべては報われる)

の:なんだかさ、すこしやる気が湧いてきたよ。
ド:よかった!
の:やみくもに頑張るんじゃないんだね。
ド:ちゃんと道筋があるんだよ。
の:でもさ、科学的にわかっているのなら、もっといろいろ教えてくれればいいのに。
ド:うん。でもさ、本を読んだだけじゃ、何も身につかないよ。
の:それはわかっている!プラクティスでしょ。じぶんでやるってこと。
ド:そう。その時にさ、そのつもりになるっていう、想像の役割がとても大きいんだ。
の:覚えることとは別のことだと思ってたよ。
ド:ことばは伝えたいことがあるから出てくるんじゃなくて、コミュニケーションがあるからことばになる。
の:いろいろ連想することがいいんだね。
ド:相手にむきあう、ふれあう、かたりかける気持ちになるってこと。
の:相手を想定すると、演じやすくなるっていう意味?
ド:もともと、想像もことばも、相手があるから生まれたんだから。
の:そうか。だから何でも「共感的な想像力だ」っていうんだね。やっと少しわかってきたよ。

ド:どんなことも、いきなりできないし、ウォームアップも練習もしないことはできないよね。
の:うん。ふだんから、っていうか、いつも、ちょこちょこ、プラクティスしていることが効いてくるのか。
ド:そう、想像だっておんなじだよ。想像してみるプラクティス。
の:じゃ、それをいつもおなじようにできるようにするのは、持続のプラクティス?
ド:そうだね。ずっと続いていくことが習慣。姿勢ができるってこと。
の:サイエンスをプラクティスに役立てようとすると、そういうことがあったんだね。
ド:そう。サイエンスだけでは足らない。作法にするためのアートがいる。
の:アートってイメージしたりってこと?
ド:アートとは、人間が身体、五感をつかってする技のこと。スキル。
の:サイエンスとプラクティスとアート。
ド:それにさ、補助となるしくみもね。それには、テクノロジーもうまく組みあわせるのがいい。
の:あ、ドラえもんが得意なやつだよね。
ド:機械に頼るんじゃないけど、補助されたり、補強してくれたり、手伝ってくれたら、ありがたいよね。
の:うん。でもさ、自在に思い出せると、どうなるの?
ド:楽しいに決まってるじゃないか!楽しいから身につきやすい。身につくことがどんどんつながっていく。
の:そうなんだろうけどさ、そこへたどり着く前はどうなの?

の:つまり、ぼくの努力は報われるのか?っていう質問だよ、ズバリ言うと。
ド:もちろん! もっとハッキリ言えば、「プラクティスは必ず報われる」ってかんじかな。
の:なんでもやれば、プラクティスだ、っていうわけじゃないよね?
ド:そう。「たくさん、勉強時間を使っても報われない」ことがあるでしょ。
の:それそれ。そのことを言ってるんだ。身につまされてるんだからね!
ド:上の表に書いてみたよ。質をともなったプラクティスなら、かならず報われる。
の:この矢印みたいに急カーブになるの?
ド:そうだよ。脳の神経回路はつながりの数、ネットワークって言ったよね。
の:あー、じゃ、どんどん、覚えたことや思い出すことが、かけ合わされていくってわけね?
ド:そうだよ。回数ありき。そして、続ければ続けるほど、いい。心を込めれば込めるほど、いい。
の:じゃ、英語も「英単語とか文法とかを覚える勉強」と思わないでやればいいのか。
ド:英語を使う人になるプラクティス!
の:学校の勉強ってさ、書いてあることを覚えて、テストで点を取ることだと思ってたからなぁ。
ド:「例文を全部暗記すればしゃべれる」わけじゃないし、そもそも、暗記もそんなにできない。
の:あっという間に忘れているよ。
ド:でもさ、いままでのことは、無駄にはならないよ。これから方法を変えていけばいいんだから。
の:わかったよ。なんだかできるような気がしてきた。

ド:プラクティスの成果はつながりのかけあわせ。「心と身体を使って技を磨く」はすべてにあてはまるよ。
の:心は想像することなんだね。でもさ、そのこと自体を忘れないようにしたいんだけど。
ド:いつも思いだせるようにしておく方法があるよ。たとえば、下の絵。(*注1)
の:英プラのトレイルの絵だよね。紙芝居みたいでいいね。
ド:人間のセンスのイメージ空間、その宇宙みたいなもの。Vision。
の:壁紙にしようかな。いつも眺められるように。
ド:それも立派なプラクティスなんだよ!

英プラトレイル絵図より

今回のシリーズでは、主として、学習にフォーカスした対話ストーリーをお届けしました。
記憶は脳の働きによる現象です。記憶をじぶんの持ちもののように捉え、性能やキャパとして捉えるだけでは、備わった恩恵を活かすことができません。
記憶は、じぶんという存在の根源です。
また、じぶんとは、だれもが、人の記憶に生きる存在でもあります。

記憶のサイエンスと、アート(想像とふるまいのスキル)と、プラクティス(作法と習慣)。

エンパシームメソッドは、記憶という、創造的かつ総合的な活動を「心技体」で捉え、より深く、より広く、より速く身につけるための、補助となるしくみです。

別のシリーズでは、すべての記憶・学習の出入り口であるワーキングメモリ、身体運動・小脳の働きと密接なプラクティスについてお話します。

記憶のサイエンスとプラクティス ③ ことばを思い出すには?へもどる

記憶のサイエンスとプラクティス ① ことばを覚えるには?へもどる

英語習得の最大のボトルネックを克服する「2秒」(動画)

「思い出す」というテーマで書かれたエンパレットがたくさんあります。そのうちのいくつかをご紹介。

思い出すから記憶になる

思い出すことはつくること

思い出しながら生きている [じぶん民俗学]

忘れるから学べる

その場になれば、思い出す。

共感の精錬

出典・参照:『英プラ・英プラを詳しく知ろう」「言語と音声のサイエンス」

Veronica O’Keane『A Sense of Self: Memory, the Brain, and Who We Are』

Torkel Klingberg 『The Overflowing Brain』

(*注1)英プラ「センスを身につける」イメージ空間のネットワーク