Empathemian『The connected sense world remembers me』

It’s all about imagination in your self.(すべて想像でできている)

のびた:記憶のしくみか。なるほどね。じぶん自身が記憶のしくみだったんだね。
ドラえもん:そうなんだ。記憶力って言うと、じぶんの持ち物みたいに聞こえるけどね。
の:記憶を定着しやすくする話はわかったんだけど、まだ疑問があるよ。
ド:どうぞどうぞ。
の:いつ、どうやって、思い出すの?
ド:いい質問だなぁ。そうだよね。脳の神経回路はつながり、つまりかけ算だから、ものすごい数えきれない数になるよ。
の:あーだから、脳科学とかで、神経回路を見ても、全部をひとつひとつ見るのはたいへん、って話?
ド:そうなんだ。心の働きを全部解明しました、っていうわけにはそうかんたんにはいかないから。
の:でもさ、すごい昔のことを、急に思い出したりするよね。
ド:それも、じぶんという記憶のシステム。心のはたらきでいろんなものがつながっているんだよ。意識できないでも。
の:無意識的な記憶も、きっかけがあれば、いろいろ思い出されてくるんだね。
ド:そう、連想だよ。体験、イメージ、ことばの響き。リズムや音。匂いや感触。すべてが総合されている。
の:つながっているってことも、想像することだよね?

ド:そう。ひとつ、おもしろい話があるよ。
の:科学的な発見の話?
ド:そう。思い出す時ね、いつもその都度、脳でも思い出すふるまいをしているんだ。
の:えーと、それどういう意味?ふるまいって、脳の回路の話?
ド:もちろん。思い出すっていう時ね、それはパソコンのデータみたいに保存してあるものをとってくるんじゃないよ。
の:あれ?長期記憶に保存したものを、引っ張り出してくるんじゃないの?
ド:ちがうんだ。神経回路は、神経細胞でできている。つながり(シナプス)と現象のネットワーク。
の:それで?
ド:思い出すきっかけになる刺激が入ると、おなじようなつながりを新たにつくる。
の:あーその都度、思い出すのか。あたらしくつくりあげているってことね。つながり現象は消えちゃうけど、つくりなおすことで。
ド:何十年前の思い出も、思い浮かべる時には、脳内では、視覚的にみるかのように、新しい網膜刺激を受けたように思い出している。
の:へぇー。思い出すってのは、もういちどつくりなおして毎回、頭の中で見てるわけ?
ド:映画を観るみたいにではないけど、言ってみれば、毎回再編集された、簡略版みたいなイメージかな。
の:何となくわかるよ。いろんな体験もみんな、短い話になってるんでしょ。
ド:記憶ってのは、いろんな、ものすごいたくさんの要素が組み合わさり、刻々とつくり直す現象。
の:なんだかすごいね。そんなことやってたのか。ぼくの脳みそも。
ド:連想イメージのネットワークみたいなものを、神経細胞のつながりネットワークで瞬時に、刻々とやっている。
の:なんだか、じぶんてのは、宇宙みたいなんだね。

ド:どうしたら思い出せるかというのは、複雑な現象なんだけど、その一方では、確実に言えることがある。
の:心の習慣。そういう話なんでしょ?
ド:無意識、つまり、じぶんで気づいていなくてもしっかりと、思い出す可能性として、きっかけを待っているんだよ。
の:記憶がぼくを待っているの?ぼくの記憶じゃなくて?
ド:ていうかさ、そんなふうに捉えておいたらいいよ。記憶は脳の中の出来事だけど、それだけじゃない。
の:周りの世界が映っているって言いたいんでしょ?
ド:そう。記憶を持っているっていうより、記憶というふるまい全体の中に生きているのがじぶん。

の:でもさ、具体的にどうしたらいいかっていうアドバイスがほしいなぁ。
ド:どうしたら思い出せないか、っていうことを知っておいたら役立つよ。
の:あーそうか。
ド:上の図をみてごらんよ。
の:連想イメージね。後から、目で見て思い出しやすくするとか。
ド:それにその連想イメージが、ネットワークになってつながっているイメージも。
の:ひとつひとつの視覚化だけじゃなくて、全体像ってわけね?
ド:だから、イメージ空間ネットワークの絵とか、トレイル絵図を書くんだ。(*注1)
の:なるほど。地図みたいなもの?
ド:大地図のようにして、いつも見えるようにしておくだけでも、ものすごく効果があるよ。
の:脳みそだけじゃなくて、じぶんの身のまわりも記憶の一部にするってこと?(*注2)
ド:そもそも、じぶんというのは、じぶんのまわりの環境もぜんぶひっくるめたもの。
の:脳の神経回路は世界や宇宙を写しているから、そのイメージも利用するってわけね。

記憶のサイエンスとプラクティス ④ 努力が報われるには?につづく

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英語習得の最大のボトルネックを克服する「2秒」

出典・参照:『英プラ・英プラを詳しく知ろう」「言語と音声のサイエンス」

(*注1)英プラ「センスを身につける」イメージ空間のネットワーク

(*注2)じぶんとは、環境も全部ひっくるめて、じぶん。

Veronica O’Keane『A Sense of Self: Memory, the Brain, and Who We Are』

池谷裕二『記憶力を強くする』、マルセル・プルースト『失われた時を求めて』

The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2000:Arvid Carlsson, Paul Greengard and Eric R. Kandel “Signal transduction in the nervous system.”