
金子みすゞ『星とたんぽぽ』より。
青いお空の そこふかく、
海の小石の そのように、
夜がくるまで しずんでる
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれども あるんだよ
見えぬ ものでも あるんだよ。
ちって すがれた たんぽぽの
かわらのすきに だァまって、
春の くるまで かくれてる。
つよい その根は めにみえぬ
見えぬ けれども あるんだよ、
見えぬ ものでも あるんだよ。
* * *
見えないけれど、ちゃんとわかっている。見えないけれど、見えている。それは。。
じぶんが空気になって、昼の星を、感じて、見ている。
じぶんが土になって、たんぽぽの根を、感じて、見ている。
じぶんが「相手の身」になる思いをすることで、見えるのです。
では、こんどは、星になってみたらどうでしょう。
たんぽぽの根に、なってみたらどうでしょう。
もうなっています。
見えないけれど、あるんだよ。
星になって、たんぽぽの根になったじぶん。
じぶんでじぶんの鏡になって、そこに、声が写っているのです。
声ことばは、相手の身になろうと想像するじぶんの響き。
くりかえし響かせると、育つタネ。
出典:金子みすゞ詩集『星とたんぽぽ』