エンパシーム [あ ] の円相にひふみ

Count one, two, three.(ひ、ふ、み、と数えよ)

良寛(りょうかん)上人に、心月輪(しんがちりん)というエピソードがあります。

ある家を訪れた際、桶屋が大きな鍋ぶたを作っていました。
うまくいかず、壊そうとしています。
良寛さんはそれをもらって「心月輪」と書き、そこに置いていきました。

心月輪とは、月のように澄み切った心。
清らかに輝く、悟りの境地を表します。

響きのよいことばですね。
そのような境地に達するとは?
現代社会に生きる人間には至難ことだ、
あるいは、凡人俗人には無縁な話だ、
と決めつけていないでしょうか。

でも、月を見上げて、澄んだ心持ちがする、
そのわずかなひと時が、誰にもまねのできない話のようには思えません。

月のようなまるい形の板切れに、
心が踊る気分になれない、ということでもなさそうです。

良寛さんは、鍋ぶたにひらめいて心月輪と書いた、それだけです。
同じように、自然に何かひらめく瞬間がたくさんあるはずです。

毎日慌ただしくて、月も見上げることもない?
ならば、話はかんたんです。

夜空を見上げるのに、どれほど時間がかかるでしょう?
ほんのひとときを大切にする、というプラクティス。
それを増やして、続けていくというプラクティス。
それをしていないだけです。

では、どうしたらよいでしょうか?
ありがたいことに、私たちは、いろんな月を思い浮かべることができます。
そして、ひとつ、ふたつ、みっつとかぞえることができます。

ものごとを抽象して、かぞえられるという不思議な力。
私たちのだれにも備わっています。

つきてみよ ひふみよいむなや ここのとを
  十とをさめて またはじまるを

手まりをついてみなさい。
一二三四五六七八九十で、十までついたらまた一から始めます。
そうしたら、ずっと続いてきますよ。

静かにすわって、ひ、ふ、み、とかぞえるだけの、わずかなじかんを持つだけです。

出典・参照:『良寛全集』、以下のエンパレットなど

「かぞえられる、という力を活かす」

「共感の心は、月かげ」

「水にうつる月のように」

良寛