Empathemian『I am a reed』

人間はひとくきの葦(あし)にすぎない。

それは自然のなかで最も弱いもの。だが、それは考える葦である。

「人間は考えるあし」ということばでよく知られるパスカル『パンセ』の一節です。

もしかすると、この有名なフレーズは、最も大きな誤解をされていることばのひとつかもしれません。

「動物や植物とは違って、人間はよく考えることができるから、人間が自然の中でいちばん偉い。」

そういう意味ではありません。

パスカルが言っているのは、人間の強さではなく、弱さです。
ひと吹きの蒸気、一滴の水でも、押しつぶされてしまうほど弱い。

けれども、人間は、その弱さを知ることができます。
じぶんが傷つきやすく、限りある存在であることを知ることができます。

そこに、人間の尊さがある。

「考える葦」とは、頭で考えることだけではありません。
むしろ、弱いものとして、世界の中に立つことです。

葦のように揺れながら、感じ、気づき、そして考えること。

考えるとは「じぶんが葦になること」です。
葦になって考えること。
そのように感じられることです。

パスカルには、もうひとつ、大事なことばがあります。

The heart has its reasons which reason knows nothing of.心は、理性の知らない、それ自身の理性を持っている

理性だけではわからないことがあります。
弱さを感じること。
他者の痛みにふれること。
心をひらいて、共に感じること。

それらは、理性の外にあるものではありません。
理性よりも先にあり、理性を包み込んでいるものです。

そのことに気づくこと。
それもまた、ひとつの理性なのです。

I am a reed. (じぶんが葦になる)

出典・参照:ブレーズ・パスカル『パンセ』347、277、以下のエンパレットなど