心の世界は五感を結いあわす

古池や 蛙飛こむ 水のおと

『松尾芭蕉・奥の細道』について、長谷川櫂さんは、このように説きます。

  

「ふつうこの句は、古池に蛙が飛びこんで水の音がしたと解釈されるが、本当はそういう意味の句ではない。「古池や」「蛙飛こむ水のおと」の順番にできたのではなく、最初に「蛙飛こむ水のおと」ができて、あとから「古池や」をかぶせた。このうち最初にできた「蛙飛こむ水のおと」は、じっさいに聞こえた現実の音を言葉で写しとったもの。

一方、「古池」は現実の古池ではない。なぜなら、蛙が水に飛びこむ音を聞いただけで、蛙が水に飛びこむところは見ていないから。芭蕉は、蛙が飛び込む音を聞いて古池を思いうかべた。「古池」は「蛙飛こむ水のおと」が芭蕉の心に呼び起こした幻影。」