Nurture your mind.(心を育め)
「耳順」について、深く「考えるヒント」があります。
小林秀雄の『還暦』から文を抜粋して、エッセンスを構成してみます。
「孔子は、還暦は「耳順」の年と言った。
耳順(みみしたがう)とは面白い言葉で、どうにでも解されようが、人間円熟のある形式だと考えたのは間違いない。」
「思想に年齢があるという意味合いは、意外なほど、今日では解りにくいことになっている。
現代が、円熟するにはむつかしい時代であるとは、誰も解り切ったことのように言う。こう多忙で複雑では、と言う。
しかし、円熟する事は、今日でも必要な事だし、現に円熟している人はたくさんいる。」
「成功は、遂行された計画ではない。
何かが熟して身を結ぶ事だ。
そのためにはどうしても円熟という言葉で現さねばならぬものがある。
何かが熟して生まれてこなければ、人間は何も生む事はない。」
「円熟という言葉が定義しがたいのは、例えば自由が定義しがたいのとおなじく、いずれも、私たちの生きている事実に浸った言葉だからであり、おそらく、両者は生の深みで固く結ばれているだろう。」
「孔子は、単に学問的知識を増やすのに時間がかかると言ったのではない。
年齢は真の学問にとっては、その本質的な条件をなすと言ったのである。
世の中は、時をかけて、みんなと一緒に、暮らしてみなければ納得できない事柄に満ちている。
実際、誰も肝腎なことは、世の中に生きてみて納得しているのだ。」
Cultivate your inner speech.(心のことばを育てよ)
この文章が書かれたのは、今からちょうど60年前です。
当時から、いまとおなじようなことが言われていたのですね。円熟?
技を磨く人が、歳を重ねて到達する話でしょ。
いいえ、そうではありません。
円熟は、耳順を別の表現で言い表したことばです。
耳順は、だれにとっても大切なことばなはずです。
生きていることの意味を物語ることば。
他者と共に生きていることの意味をかみしめる、心の円熟を表すことば。
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出典・参照:小林秀雄『考えるヒント2』「還暦」、以下のエンパレットなど
インナースピーチ 心の中のことばを抽出する(6)内語のシードをまいてじぶんを育てる