Empathemian『耳順』

Listen and reflect.(耳を傾け、あとでふりかえれ)

孔子は、60歳で迎える還暦を「耳順」と言いました。
耳(みみ)順(したがう)と読みます。
順は、素直に、相手に付き従うという意味です。

なるほど。
素直に人の話が聞き入れられるというのは、大変なことなんだな、と。

しかし、ちょっと変な気もします。

3歳の幼児に「ママの言うことを聞いて」と言い、
9歳の少年に「ルールを守りなさい」と言い、
18歳の青年に「教えを心得よ」と言います。

人の話を聞いてしたがうぐらい、こどもの時からやってきたことですよね?
いつもできることではないかもしれないけれど、ふだん、人の話は聞き入れているのではないでしょうか?

人の話を聞き入れられるようになるのに、それほどの時間がかかるのか?

2500年前に生きた孔子の時代。60年の歳月といえば、人生のほとんどです。
聖人と呼ばれる人物が人生をかけて、ようやく、耳がしたがうようになった、というのです。

しかも、孔子の語る「耳順」は、迷いのなくなる40歳「不惑」、天命を知る50歳「知天命」の後に続くことばなのです。(*注1)

Empathemian『耳順』

Internalize your speech seeds.(じぶんのことばとして内面化せよ)

ことばを聞き入れるとは?
さかさまに考えてみましょう。
人のことばを聞き入れないとは?

(1)じぶんのことばかりで、人の言うことに耳を傾けない。
(2)人の言うことばかりを気にして、じぶん自身の声を聞かない。
(3)人の言うことにも、じぶん自身にも耳を傾けない。

(1)の時があれば、(2)の時もあります。
(3)はじぶんがあせっている時、見失っている時などでしょうか。

言うまでもなく、人の話か、じぶんの都合か、どちらが大事か?ということではありません。
どちらも大切。
では、両者のバランスを取ることでしょうか?

いいえ、どちらかをそれなりに、ではなく、
いつも両者をあわせて、です。
人かじぶんかを対立させるのではなく、調和させること。

というのは簡単ですが、何がむずかしいのでしょう?
私たちは、ふだん、ことばに対して無意識のうちに反応しています。
だから、気づかないままのことが多いのです。

具体的な方法はないでしょうか?
あります。

ふりかえることです。
・ふりかえるとは、人のことばを思い出すこと。
・ことばを聞き入れて、じぶんのことばにすること。

ことばをじぶんの声に出して、
じぶんの身体の中で響かせることです。

私たちが忘れがちなのは、「ことばをじぶんの声にする」ことです。
じぶん自身の声を聞かないから、人のことばも聞き入れないままになってしまいます。
じぶんと結びついていないままの状態では、「耳はしたがっていない」のです。

じぶんの内面に取り入れ、思い出せるようにする。
別のことばで言うと、インナースピーチ化させる。
声に出すと、心の中のことばになる。
そして、じぶんのことだけでなく、相手に寄りそえること。

「耳したがう」の真意は、そのことです。

耳順(耳したがう)とは?②(時をかけ、続けると円熟する)へつづく

出典・参照:孔子『論語』、以下のエンパレットなど

(*注1)原文は、子曰、吾十有五̪而志乎学、三十而立、四十而不惑、五十而知天命、六十而耳順、七十而従心所欲不踰矩。

インナースピーチ 心の中のことばを抽出する(1)思考を形づくる内語

肉声は心の中心にある(音とイメージをつなぐもの)

Self-Talk(ポジティブ思考よりも、じぶんに気づくこと)

共感のふるまい② 恕と仁の間

円と三角とカタツムリ [声をカタチに変換するフィルター]