Inner speech seeds your thought and emotions.(インナースピーチが思考や感情を生み出す)
インナースピーチの働きを整理してみると、このようになります。
1.思考 (Clarify thoughts)
2.記憶・学習 (Remember/Recall)
3.作業を進める (Self-instruct)
4.自己評価・確認 (Self-evaluate)
5.じぶんをはげます (Self-satisfy)
6.会話を想起する (Imagine conversations)
7.文を書く(Write/organize texts)
8.内省・自覚する (Talk to oneself)
ことばに出すことで、行動をサポートしてくれます。
じぶんに語る、という高次のメンタル行為だけではなく、ごく自然に。
いろいろな場面で、気づいていなくても無意識的にふっと表れてくることば。
だから、声で思い出される、短く、平易なセリフなのです。(*注1)
You are your inner speech.(自己は内語に現れる)
インナースピーチは、じぶんの内側のスピーチ。
したがって、目に見えるカタチはありません。
言語そのものですが、どこか捉えどころがありません。
でも、これまでお話ししてきたように、順を追って思い起こすと、なくてはならないものであることがわかるでしょう。
ふだんの声にだして話すことばと基本は何も変わらないのですから。
ジェレミー・スキッパーさんはこう言います。
「コミュニケーションは、豊富なコンテクスト情報を伴っている。
だが、行動科学や脳神経科学分野における大半の研究はことばの周辺を対象にしていない。
言語そのものは認知研究の中心にないからだ。」
「一方、認知に関わる非言語の分野では、言語は刺激手段のひとつに過ぎない。
言語実験の焦点は、言語性質(音素、音節、形態素、構文など)がほとんどで、実際の言語使用の研究は極端に少ない。」
「近年、言語の使用が視覚や感情の認識、学習や記憶、推論や社会的認知を形成し、決定づけているという多くの実証がある。
だが、それにも関わらず、行動と意識の相関に関する実証的研究のほとんどは、言語を論じないか、単なる認知プロセスの一つとして周辺的にしか論じない。
逆に、ほとんどの言語研究は意識に関心を持っていない。」
心と言語。言語と脳。脳と身体。身体と環境。意識と無意識。
どれもが相互作用していることは明らかだけれども、ピンポイントに関連を示すのは容易ではありません。
でも、実は私たちの日々の心の中の出来事として、実感できるものでもあります。
ミッシングリンクは、心の中のことば、すなわち、インナースピーチです。
インナースピーチは、直接捉えられないもの、漠然としているものもたくさんあります。
無意識的に出されることば。
断片的で、後から意識できるもの、できないものがある。
インナースピーチの中には、ポジティブ、ネガティブ、ニュートラルなセリフがあります。
じぶん自身に対してネガティブな声があるのかもしれない、ということになかなか気づけません。
心の病にせよ、心身の健康にせよ、じぶんの内語に気づけないことが影響しています。
このように、インナースピーチには無意識的な要素、気づきにくい要素が含まれます。
どうしたら、インナースピーチをよりよく使うことができるのでしょう?
すでに、こたえは出ています。
声にだして、じぶんでふりかえることです。
もともと、そのような形で身についていくのですから。
大事なことは、ただ声にだす、ことではなく、
落ち着いた状態をつくり、無意識的、自然な流れをつくることです。
短期的な目的意識よりも、思いやねがいを持ちましょう。
たとえば、「英語ができるようになる」ではなく、「英語でしたいことがある」。
英語で仕事をする、英語で学習する、英語で映画や音楽を楽しむ。
短期的な目的を立てると、どうしても、「入力する知識の量」で測ろうとするものです。
目的に対して、進捗のギャップができてしまうと、継続する力が減衰します。
それよりも、日頃の中に自然なふるまいとして声を出すルーティンをつくることです。
気がついてみれば、それが最も早く、確実な道のりになります。
なぜなら、その過程で心の中に声のする相手ができ、インナースピーチ化がおきるからです。
心の中にセリフが浮かび上がるようになることが、身に着けること。
逆に言うと、インナースピーチなる、在庫のようなものが先にあるのではなく、
ふるまうことによって心の中に生まれてくるもの。
エンパシームでシードをつくることで、つまり外側につくることによって、
今度は内側にじぶんにとって大切なことばが定着します。
脳内に、音で再現することば、インナースピーチ。
それは、あなたの肉声によって、他者のセリフも、じぶんのセリフ、脳に刻まれ、写されていく営み。
インナースピーチ (6) ことばのタネのまいてじぶんを育てるへつづく
出典・参照:Jeremy Skipper 『The neurobiology of language and consciousness』、Alain Morin 『Inner Speech and Consciousness』
(*注1)インナースピーチには、3つの特徴があります。(1)凝縮性 (セリフやフレーズが短く、メモ的になる)(2)対話性(じぶん、他者の声のセリフが聞こえる) (3)意図性(ものを覚える時に(ワーキングメモリを使って)意図的に使える)
Self-Talk (ポジティブ思考よりも、じぶんに気づくこと)