仙厓義梵『これ食うて、茶のめ』

Keep it simple.(シンプルに)

立:従容録から、ひとつ、例をあげてみましょう。
大:はい、どうぞ。
立:では、Case 12。専門家ならその道の技を磨いているのに、禅問答もせずに、ここでは田でつくった米を食べているだけ、という問答。
大:はい、まさに。求めることじゃないのですね。
立:あえて、拍子抜けすることを言うんですね。
大:そうです。拍子抜けなんですが、それが理想の境地を語るためのレトリック。
立:レトリック!技巧というと、表面的に聞こえるけれど、それは本質なんですね。
大:そのとおりだと思います。なんとかして導くことなのですから。
立:そういえば、仙崖せんがいさんの「あれ」に似ていますね。(*注1)
大:ああ、たしかに。「これ食うて、茶のめ」と。
立:それでいいの?みたいな。
大:それだけですよ、それが理想です、と。
立:それができれば苦労はないですよね?
大:できません。
立:だから、プラクティスしかない、と。
大:はい。
立:プラクティスというと、目的達成の練習という部分に目がいってしまいます。
大:プラクティスにも、本来、そのような色付けはないでしょう?
立:はい。プラクティスは、すること、です。ふだん、身につけている行為や行動のこと。
大:それ以上でもそれ以下でもない。
立:そのとおりです。
大:ものさしを変えるとか、習慣を変えるというのは、容易なことではありません。
立:プラクティスをしている時に、それができる、といったらよいでしょうか。
大:そうですね。
立:ずっとプラクティスをし続けるということになりますね。
大:はい。それ以外はありません。
立:終わりはないわけですね。
大:ありません。というか、でも、プラクティスさえ続いていればよいのですから。
立:そう思えること自体を目指すのですね。
大:心が、自由自在になれればよいのです。
立:近づこうとしていること自体が、本質なのですね。

Keep it simple. That’s the thing. (シンプルに。それこそが理想)

従容 ③ プラクティスに寄り添う [想像がいのち]へもどる

従容 ② 近づけるメソッド [ものさしを変える]へもどる

従容 ① みちびくガイドとなる [方便は相手のため]へもどる

出典・参照:以下のエンパレットなど

ゆっくりと、円をえがく。

「練習の矛盾」を克服するプラクティス

仙厓義梵せんがいぎぼん