上に上がっていくのは、フィードフォワードのチカラ

Connect with your unknown self.(未知のじぶんにつなげ)

論理学に必ず出てくることば。
演繹えんえき(deduction)、帰納きのう(induction)、そして発想的な推論(abduction)。(*注3)
むずかしく考える必要はありません。
duct(ダクト)は、管を意味します。つまり、思考の道筋には3つパターンがあるということ。
そのうち、アブダクションは、実は、気づいていないだけで、ふだん使っています。
私たちの思考・想像はとても推論的なのです。

論理の3パターン

結果から原因を推論する、といったことは、日常茶飯事にあります。
ただし、脳はできるだけエネルギーを節約するために、決まった答えを採用しがちです。
たとえば:
「失敗したのは、〇〇のせいだ。」(誰かが悪い・自分の努力不足など)
「成功したのは、〇〇のおかげだ。」(自分が努力したから)

本当は、見えない要因、可能性がたくさん組み合わさっていることでしょう。
でも、「原因→結果」というパターンがある、と先に思い込んでいると、原因を推定するというより、常識的なこたえを(気づかぬうちに)採用してしまうわけです。

そこで、決めつけるのではなく、可能性を考える。
つなげてみて、後から考える。
こたえはひとつでない、といくつか可能性をことばに出してみる。

発想をことばに出す

具体的に、発想のことばをつなぐことです。
じぶんでふりかえったことばを、今度は、未知のことに、ことばでつなごうとすること。
つまり、連想することや、可能性になることを、ことばに出してみることです。

Ask yourself.(じぶんに聞いてごらん)

別の言い方をすると、「これは〇〇かもしれないね?」とじぶん自身に聞くことです。
問いを(ことばにして)立てること(Act of Asking)です。

ただ、漠然と思っただけでは、消えてしまいます。
フィードフォワードは、ことばに出し直して、未知と、いまのじぶんをつなげること。
先につなぐセリフを、じぶんに向けて出す行為。

長く考える、むずかしく考えるのではなく、短く、シンプルに思いつくこと。
それをひと言のセリフにしてとどめれば、「つながり」ができていきます。

フィードフォワードは上昇するチカラ

Getting to maybe.(もしかしたら、に近づくこと)

「ひとつの正しい答え」ではなく、じぶんでつくるいろいろな可能性

フィードバックは、スキル(技)の向上に役立ちます。
フィードフォワードを組み合わせることで、センス(心、すなわち、つながる世界)を磨き、上達や姿勢を身につけることに大きく貢献します。

絶対的に正しい答えを求めるのではありません。
確率の高いものを選ぶ、可能性の高いものを探る、といった、一瞬の思考。
直観にカタチを与え、道筋をつけることです。

ふだんの生活では「いつも正しい答えがひとつある」かのような錯覚を抱きがちです。
また、学校のテスト勉強に慣れていると、こたえは「じぶんでつくる」という考え方になりにくい。
現代社会は、フィードフォワードのプラクティスをする機会が少ないのです。

Empathemian「プラクティスは、自転車のように」

It’s like riding a bicycle.(自転車に乗るようなもの)

フィードフォワードは、あなたを牽引してくれるチカラになります。
自転車に乗る時のことを思い浮かべてみてください。
フィードバックは、推進力。くりかえしを支え、気づきを促し、スキルを高める力になる。
フィードフォワードは、操縦。前に一歩すすめる力。つながりをつくり、センスを磨く。

フィードバックは、他者からじぶんへ。じぶんがそれを活かすこと。
フィードフォワードは、他者の手助け、はげましも借りつつ、じぶんがじぶんへ。じぶんから他者へ。

エンパシームメソッド「みちゆくときよ」も、フィードバックとフィードフォワードを循環的に組み入れたしくみです。(注4)
ちょうど、自転車のペダル、後輪と、前輪のように。

・ペダルを漕ぐじぶん(くりかえしーIteration)
・推進力となる後輪(ふりかえり-Reflection)
・先に牽引する前輪(つながり-Connection)

プラクティスの効果、効率を高めるフィードバックとフィードフォワードが互いに補完しあい、循環した流れになるように。
「くりかえし・ふりかえり・つながり」という三大要素をしくみにすること。
「プラクティスは自転車のように論」を、別のエンパレットにてお話しします。

自転車のようにプラクティス①(しくみになる)

出典・参照:米盛祐二『アブダクション』、スタニスラス・ドゥアンヌ『意識と脳』、三中信宏『統計学の王国を歩いてみよう』以下のエンパレットなど

(*注3)日本語の演繹えんえきということばはむずかしいですね。一般原理から個々の事例を導くこと。帰納きのうは、その反対で、個々の事例から一般的な原理を導くこと。英語の方がパッとみてわかりやすいのは、duct が導くという意味で、そのことばの通り、論理の道筋を示すことばだからでしょう。事例を原理に導き入れるのが induce。原理から外に出すので deduce。一方、推論する abductionは、retroductionとも呼ばれますが、事実や結果から逆のぼって、未知の部分を推論する方向に導くことです。要するに「これは〇〇だったのかな?」という思考パターンのことです。

仮説と発見の論理学の創始者パースが説いたアブダクションは、現代の認知科学では「ベイズ推定」とよぶ確率推論とほぼおなじです。ベイズ理論は、結果から未知の原因へと推論が逆方向になされます。この方向性がabとかretroといった接頭語で表されるわけです。「既知の限られた情報のみを頼りにして、未知の問題を解決する手段。ある時点でもっともよい仮説やモデルを選び出すこと」(三中信宏)。つまり、正しい答えがあるという前提ではなく、最もよい仮説をつくりだす働き。

(*注4)エンパシームアプリの「み・ち・ゆ・く」は、フィードバックを含む流れ。「と・き・よ」は、フィードフォワードを促進するための機能です。じぶんに向けてフィードフォワードするだけでなく、親身に他者に対してもフィードフォワードをすることができます。相手の存在をプラットフォームに構想することで、フィードバック(手本との比較や、本人の変化・上達、ピンポイントなアドバイス)とフィードフォワード(次への個別アドバイスや、はげましなど)を循環させることができます。

プラクティスの意味 ①(しっかり整理すると)

プラクティスの意味 ②(むずかしかったことがやさしくなる、変化のプロセス)

プラクティスの意味 ③(フィードバックとフィードフォワード)

Festina Lente ④ [ゆっくりすることで、深くなる学び](上達の秘訣)