Empathemian『Shape Your Sound』

Shape your words.(ことばをカタチづくれ)

あえいう えおあお
かけきく けこかこ

発声の基礎練習。音の風景です。

アゴ、ほほ、くちびるを動かして、
口のカタチを順に変えていきます。

母音は、口の中にできる、二つの空間どうしの共鳴音です。
舌を動かすことで、空間の形が変わり、音が変化するのです。

絵にすると、こんな具合です。(下の図をみてください)
舌の前側と、舌の後ろ側に、それぞれ、空っぽの部屋があるとイメージしてください。
ふたつ空間の共鳴音が、音の周波数として捉えられます。
周波数の座標が、あけた口のカタチと似ていますね。(緑色で示した逆さ台形のカタチ)(*注1)

Empathemian『母音顔の図』(矢印の方向にむけて周波数が高くなる)

日本語は、母音をしっかり出すと、響きがよくなると言われます。(*注2)
口のカタチが音。
日本語の「顔のカタチ」があるのですね。

また、日本語のカタチには、リズムも関係あります。
ひとつ、カタチあそび・リズムあそびをしてみましょう。

明治の詩人・北原白秋の「あいうえおの歌」から。(*注3)
五十音の暗唱、ことばの練習に使われました。

あめんぼ あかいな あいうえお
かきのき くりのき かきくけこ

なめくじ のろのろ なにぬねの。
まいまい ねじまき まみむめも。

4・4・5のリズムです。
冒頭の発声練習「あえいう えおあお」を組み合わせてみましょう。

あえいう えおあお あいうえお
かけきく けこかこ かきくけこ
させしす せそさそ さしすせそ
たてちつ てとたと たちつてと
なねにぬ ねのなの なにぬねの
はへひふ へほはほ はひふへほ
まめみむ めもまも まみむめも
やえいゆ えよやよ やいゆえよ
られりる れろらろ らりるれろ
わえいう えをあを わいうえを

文字を眺めているだけだと、何ともありません。
が、声に出してみると、ことばが躍り出すようです。

「まめみむ めもまも」なんて、ことばはないのに、
ちゃんとしたセリフのように聞こえてきます。

リズムがあるから、意味が感じられます。
リズムがあるから、かんたんに覚えられます。
かんたんに言えるから、いつまでも忘れません。

不思議ですね。
顔でカタチをつくるふるまいが、音になり、リズムになり、
ことばになり、プラクティスになります。

カタチとリズムのあそび。

出典・参照:Peter Ladefoget『A Course in Phonetic』

(*注1)フォルマント周波数と呼びます。図は、周波数の座標軸です。たとえば、「い」の音は、横軸 3000ヘルツ、縦軸 500ヘルツの周辺。英語とはたいへん大きなちがいがあります。声の周波数については、以下のエンパレットをごらんください。

円と三角とカタツムリ [声をカタチに変換するフィルター]

(*注2)英語は、日本語と比べると、この逆さ台形(緑色の範囲)の位置が、もっと右上の方にあります。フォルマント周波数帯域がちがいます。つまり、口の中の空間サイズがちがうのです。日本語の母音は、舌の前の空間も、舌の後ろの空間も、英語よりずっと小さいのです。(空間が小さい方が周波数が高い)。日本語のほうがアゴの動きが小さいということが言えます。英語はさらに、もっとたくさんの母音があるので、より複雑です。また、日本語にはない、子音(息を出す時の風切り音)がたくさんあります。そのため、より複雑です。口の中のカタチの微妙な変化を身につける必要があるからです。一方、日本語の音の変化はもっとシンプルですが、明瞭に聞こえるようにするためには、母音と、その音の長さをクッキリとさせる必要があります。英語の母音について、以下のエンパレットでさらに興味深いお話を用意しましたのでごらんください。

母音の秘密(「あいまい母音」ではなくて、運動中のカタチ)

(*注3)北原白秋「五十音」

「あそぶ」プラクティス③(くみあわせてつなぐ)

「あそぶ」プラクティス①(道をゆく)