
『アランブラ宮の壁の』 岸田衿子
アランブラ宮の壁の
いりくんだ つるくさのように
わたしは 迷うことが好きだ
出口から入って 入り口をさがすことも
* * *
スペイン南部のグラナダにあるアルハンブラ宮殿。
La Alhambraとつづります。ラ・アランブラのように発音します。
アラブ語の、夕陽に映える「赤い城」という意味です。
4行の詩の情景に、私たちの日常が映っているかのようです。
迷ってはいけない。迷うことは、よくないこと。
迷わないようにしよう。迷うことなかれ。
迷わないためのスキル、迷ったときのノウハウ。
知らないうちに「迷うようなこと」をしないように、自分をしむけているのかもしれません。
入り口から入って、出口から出る。
そんなこと、考えることすらないくらい、そういうものだと、あたりまえに思っていないでしょうか?
迷わなければ、何もわからない。
そこは出口なのか、入り口なのか、迷ってはじめてわかる。
じぶんはなぜ、ここにいるのだろう。
迷ってはじめて、問いになる。
迷いなさい。それは、未知に出会うこと。
いりくんだつるくさのような、未知の世界。
迷って、さかさまに歩いて、進んでゆくうちに、かならず、何かに出会える。
すべての路は、つる草のようにつながっている。
それは、出口(問い)からはじまる、じぶんの路。
Just ask. It keeps you going.(たずねるだけで、前進。)
出典・参照:岸田衿子 詩集『あかるい日の歌』