写真:山本駿介

あるとき、石仏に興味をもつようになった青年の話を聞きました。彼は水質検査の技師で各地の河川を対象に調査に歩いています。そのうち不思議なことに気がつきました。川や沼、池のほとりにかならずといってよいほど、今まで見たことのない石仏が祀られているというのです。それは弁才天、あるいは不動尊などのようですが、彼はなぜ水辺にこれらの石仏があるのか、に興味をもち熱心にみてまわるようになりました。池の中の小さなお堂に祀られていた愛らしい弁才天が彼を石仏の世界に誘いました。

ある山歩きの好きな青年が、苦労して登ったアルプスの山頂で、風に吹き晒された異形の石仏を見て、信仰の力の偉大さに圧倒され、その後は石仏を探して山登りをするようになった話もききました。

若いご夫婦が、熱心に石仏めぐりをなさっている姿をみて、おたずねしたことがあります。彼女のご主人は難病にかかり、現在は治す方法がないとのこと。明るく生きていきたいと休日に二人で石仏をたずね、彼女は石仏の勉強をはじめました。けなげなこの奥さんの姿をみると、野の仏の存在をありがたいことと思わずにはいられません。

お寺の本堂に安置された仏さまも大切ですけれど、いつでも、どこでも、だれにでも、解放されている野の仏さまの存在は、庶民信仰にふさわしい素晴らしい先人の贈り物です。それぞれの方が、それぞれの方法で石仏に触れ、感じ、そしてそこから何らかの発見をしてくださるならば、石仏の世界はどんどん広がっていくことでしょう。

そのために、できるだけ多くの方々に、石仏との出会いのチャンスを提供し、より多様な情報をお伝えしたい。エンパレットは、野にある仏がみちびくご縁を広げる「縁のパレット」にもなりますね。パレットはいつでも持ち運びできる、手のひらサイズの道具。絵の具のパレットのように、たくさんのご縁が合わさるように願って。出会いのチャンスを広げましょう。