I’m good.(だいじょうぶ)
雨あがりの土曜日。
水たまりのできた、ぬかる山路。
後ろ方から、はしゃぐ声。
パタパタと足音が近づいて来ます。
何が起きるか、想像が浮かんだ瞬間です。
こんな声が聞こえてきました。
Hey, you’re good.
お母さんがこどもたちに声をかけています。
「水たまりに入らないでね。」You’re good.は、わざわざやらないでよい、という意味です。
中に入らないで、と注意しているわけです。
このような場面で「入らないでね!」というセリフを英語にしてみて、と言うと:
Don’t step in it. (中に入らないで)とか、
Stay out of the mud.(泥に入らないで) とか、訳すかもしれません。
でも、日常はもっとシンプルなことばと想像力でできています。
日本語でも「大丈夫」という表現がよく使われまね。
それと、似ています。
セリフが出てくる状況が似ている、という意味です。
・なくて大丈夫。
・しないで平気。
goodや大丈夫という単語が使われる時。
セリフの後ろが省略されているわけです。
それは、文脈が共有されているからです。
相手の言うことにお互い察しがつく時には、セリフが短くなります。
少し、例をあげてみましょう。
Anything else? (何か他には?)
I’m good.(結構です)
→(I’m good without anything more.)
Are you good?(大丈夫?)
Sure, I am good.(もちろん)
→(I’m good without your help.)
How are you doing?(調子どう?)
I’m good.(いいよ)
→(I’m feeling good.)
Are you good with it?(その案でよろしいですか?)
I’m good.(了解)
→(I’m good with your idea.)
Sorry I’m late. (遅れてごめん)
It’s okay. I’m good. (問題ないよ)
→(I’m good with your late arrival.)
「good = よい」という単語の置き換えだけでは、意味がわからないことがたくさん出て来ます。
ことばの意味は、発せられるセリフの中、そして、セリフとセリフのあいだにあります。
日常の会話は、すべて想像の世界です。
相手を察する行為そのもの。
私たちは、1秒という短い時間で、そのような想像の処理を行なっています。
ふだんは、気づくことすらなく、迅速にこなしているのです。
外国語、たとえば英語の例を使うと、そのことがはっきりします。
ことばは、声に表されたセリフから想像を広げる営み。
You’re good.という、最もカンタンな単語でできているセリフでも、聞き取れないことがあるでしょう。
音が聞こえないのではなくて、パッと想像がつかないので、瞬時の音を聴き逃してしまうからです。
「センスを養う」と言いますが、それは音のセンスはもちろん、
想像する、つまり相手や状況を察するセンス(心)です。
目に見える、具体的な物事が起きている状態でも、声で想像しているのです。
ことばの本質は、相手の心に触れることです。
そして相手が、じぶんの心に触れることです。
Are you good?(平気?)
出典・参照:英語トレイル 1、以下のエンパレットなど
Pleaseは「してください」ではない(ことばの源は心づかい)
See youは「バイバイ」ではない(ことばの源は心づかい)