The sounds connect images.(音がイメージをつなぐ)
『ことばを身につける』 5回シリーズでは、英語を題材にしました。
・言語は、まず音声である
・「音のまとまり」処理が心の働きを生んでいる
・身につけるとは、無意識に心身が動くようになる
現代の日本語を使う、私たちの日常は、「ことば=文字」というイメージが強いですね。
文字に音がついているイメージ。いわば、カナモジを読むように話します。
学習といえば、文字に書かれたことを覚えること。
その感覚が身についているのですね。
ふだんは気がついていないし、気にもとめていないことが、英語と比べるとその特徴が明らかになります。
日本語では、音は二次的なものなのでしょうか?
そんなことは、ないはずですよね。
今から100年以上前、言語の本質は音声表現にあることを熱心に説いた人がいます。
折口
声音の輻射作用によって、観念界に仮象をうつし出す。
「言語は、声音形式の媒介による人類の観念表出運動の一方面である。」
言語とは、ことばが声として発せられることで、人の心の中に想像の世界を映し出す運動だというのです。
It’s in the sound. It’s the sound.(音の中に、音そのものに)
言語の働きは:
(イ)類化作用 (想像の働き)
(ロ)表号作用 (抽象概念化)
(ハ)音覚情調 (言語の音そのものがかもし出す雰囲気)
この中で「音覚情調」が重要だといいます。
ことばは、意志を伝えるだけでなく、感情を伝える(共有する)もの。
声のことばに、情調(気分や雰囲気)を生み出す力があります。
音覚情調の根底をなすものは、単音の音質である。
ひとつひとつの音に情調がある、音と組みあわさり(単語、句、文)にも情調が生じます。(*注2)
言語情調とは、音から生じる情調の複合体。
意味を伝えるだけではなく、情調を伝えるのが言語。
言語を構成するもの:
(1)音質
(2)音量
(3)音調(アクセント)
(4)音脚(リズム)
(5)音の休止(間)
(6)音位
音脚とは、数音時の集合が、小休止によって、ほかの集合と分かたれた区域をいう。
リズムのことを、音脚と呼んだのですね。
しかもそれは、発音される音のまとまり(チャンク)と間合いによってつくられる、と。
英語の話とまったくおなじです。(*注3)
現代の私たちの日本語観は、文字中心です。
文字で書かれた単語で知識を覚えることが、学習の中心にあります。
その大切さを否定することはできません。
が、音の本質的な重大さを、思い出したいものです。
日本語は、日常使われる単語の数が(圧倒的に)多い言語です。(*注4)
その理由は、古来より、外国語を日本語化してきたからです。
折口信夫『言語情調論』以後、この100年あまり、膨大な数のことばが日本語化しています。
漢字のことば、カタカナ表記の外来語(特に英語)。
そして、和語にはオノマトペがあります。
日本語は、情調を音の響きで伝えるオノマトペが圧倒的に多い言語でもあります。
言えるオノマトペをリストしていったら、だれでも軽く500、いえ、1000ぐらい、言えるでしょう。(*注5)
それなのに?
言語というと、文字の方がエライという雰囲気があるのかもしれませんね。
言霊(ことだま)ということばは、よく知られています。
ことばにいのちがある、と。
それは、文字のことではありません。
文字が音声を伴う時。
本当のいのちは、音のつぶがつらなる、その小さな時にあるのです。
エンパシームは、言語情調を包むタイムカプセルです。
そしてまた、音といういのちを持ったことばによりそい、そのことばをわかちあうことのできるプラットフォームです。(*注6)
出典・参照:折口信夫『言語情調論』、以下のエンパレットなど
(*注1)折口信夫(Wikipedia)『言語情緒論』は、修士論文の原稿を書籍化したものです。
(*注2)音そのものに意味があることを述べたエンパレットなど
(*注3)「音のまとまりを捉える」について
ことばを身につける ⑤ 「ほんの3分で変化が生まれる」(および5回シリーズ)
(*注4)日本語の特徴について書いたエンパレット
身につけるしくみ ⑤ (表裏)無意識の縁を捉える Unlearning
(*注5)英プラ トレイル3には、日本語のオノマトペ表現と英語の語彙フレーズをあわせたユニークなテーマがあります。
(*注6)「エンパシームは、言語情調によりそい、わかちあえるプラットフォーム」についての詳述エンパレット(4回シリーズ)
寄りそいあえるコミュニケーション(1)[向きあうばかりではない]