No one can live in your stead.(だれもじぶんのかわりには生きられない)
ルーティンで学ぶとは?
の:ルーティンのためのアプリとか、あるんでしょ?
ド:データをとって健康のために必要な運動とかを、教えてくれるやつとかね。
の:AIが入っていて、何でも教えてくれるといいよね。
ド:うーん。どうかなぁ。
の:何で?テクノロジーが人間の拡張だって言ってたじゃない。
ド:そうだけど、肝心なことを忘れないようにしないと。
の:肝心なこと?
ド:そう。だれも、のびちゃんの代わりには生きられないよ。
の:わかってるよ、それぐらい。あたりまえでしょ。
ド:わかっていても、気づいていないことがあるんだ。
の:何それ?
ド:何でもうまくいくことだけが、いいわけじゃないってこと。
の:え?それどういう意味??
ド:たとえば、AIのアプリがいつも正しい判断をしてくれたとする。
の:うんうん。助かるよね、そうしたら。
ド:でもさ、それにずっと頼っているとじぶんで判断できなくなるんじゃない?
の:だけど、正しい答えをポンと出してくれたら、間違えることも迷うこともなくなるよ。
ド:のびちゃんは、それでいいの?
の:あれ?何か、いけない?
失敗して学ぶ体験をルーティンに
ド:そこが落とし穴。
の:また、落とし穴?
ド:まちがえたり、失敗したりするから、学べるんだよ。
の:まぁ、そうかもしれないけどさ。
ド:いつも「正しい答え」がひとつあるわけじゃないんだし。
の:うまくやろうとするだけじゃいけないの?
ド:失敗してはじめてわかるよ。
の:体験が大事だって言うんでしょ?
ド:うまくいかない、ということを体験すること。
の:あぁ、「壊れてはじめてわかる」ってやつか。(*注1)
ド:そこまでいかないうちにやめちゃうから、感覚的にわからない。
ド:そう。間違えるためのAIアプリとか、失敗するための判断をする機械ってわけにはいかないでしょ。
の:そりゃそうだ。そんなのあっても困っちゃうよね。
ド:じぶんでやってみる、そういうルーティンを手伝ってもらいたいところ。
の:失敗の感覚があるからこそ、うまくできるようになるんだね。
ド:AIというと、何でも計算して、すごい予測ができるみたいな話ばかりでしょ。
の:うん。人間よりすごいって。
ド:でもいちばん本質的なことは、人間がまちがえることの大切さを忘れちゃうってこと。
の:「100点じゃないといけない」んじゃないんだね。
ド:そうだよ。たとえば野球で、思い切りバットを振って空振りする体験なしに、ホームランを打てるようにならないよ。
の:そうだね。なんだか、気が楽になってきたよ。
イスコヴィッチ博士はこういいます。
「AIが人間の代わりにいつでも正しい判断をしてくれるおかげで、人間は誤った決断をしなくなる。その時、われわれは一体、何者になるのだろうか?この世の不確実性にむきあって、個人としても集団としても成長することのできない、貧しい生き物になるかもしれない。」
「AIが何でも決めてくれる未来?いくら機械が人間の判断より性能が高かったとしても、じぶんで自由に考えることのできるという、人間が授かった恩恵を放棄してはいけない。」
「ルーティンの力をもたらすアートとサイエンスの実践によって、よりしあわせで、意味のある人生を送ることができるだろう。いや、それだけではない。価値のある人生を送るには不確実性が必要なのだ。不安定で不確実な世界のおかげで、私たちはより価値のある存在になれる。」
Embrace uncertainty.(わからない、ということを大切にする)
Nurture our agency to live in uncertainty.(不確実な世界を生きる力を養う)
ルーティンのサイエンスとアート ③ 想像するプラクティスのルーティン へつづく
ルーティンのサイエンスとアート ① 作法がないとルーティンにはならない へもどる
出典・参照:『修養トレイルガイド』、Angel Iscovich、Joe Garner、Michael Ashley 『The Art of Routine: Discover How Routineology Can Transform Your Life』および以下のエンパレットなど
(*注1)エンパレット「こわれて、はじめてわかる。」をごらんください