アリストテレスの、こういうことばから。
What lies in our power to do, lies in our power not to do.(何かをする力は、何かをしない力にある)(*注1)
どういう意味でしょうか。
私たちはふだん、何かを成しとげるには、たくさんのことをしなければいけない、と考えますよね。
何かをしないとは、何もしないことではありません。
でも、身心を休めて、エネルギーを回復するには、意思的な活動は「何もしない」ことです。
それは、力を養っている時です。
いろいろやろうとすると、知らないうちに、エネルギーは消耗します。じぶんの身体や心を疲れさせるようなことを、しないことで、何かをする力が湧いてきます。
静かにすわり、心を落ち着ける。
みのまわりをスッキリさせ、ゆっくりとする時間。
人間に備わった力は、意識的に何もしない時に、発揮されます。
何もしない時に、自然な姿のじぶんの元気が、湧いてくるのです。
「足し算」ばかりで暮らしていると、すっかり気づかなくなっています。
でも、大丈夫。
引き算、思い出せますよね?
入力過剰の1日だったら、ほんのひと時、それを和らげる時間を持ちましょう。
静穏ひとつ、はく息ひとつ、ギシギシいっぱいになった心の袋から、ひいていく感じです。1をひく、引き算の要領です。
出典・参照:Aristotle 『Nicomachean Ethics』、以下のエンパレットなど
「自然な流れで間をつくる」(エンパシーム紹介動画)
(*注1)出典は、アリストテレス『二コマコス倫理学』です。オリジナルのギリシャ語の英訳が名言集や引用句のウェブサイトに散見され、いろんなバリエーションがあります。たとえば:
What it lies in our power to do, lies in our power not to do.
Whatever lies within our power to do lies also within our power not to do.
翻訳からきている英語の表現(it)が違っているので混乱するところもありますが、「人間の力」を指します。出典元には、前段があります。“Virtue lies in our power, and similarly so does vice; because where it is in our power to act, it is also in our power not to act…”(美徳も悪徳も人間の力。なぜかといえば、人間には、「する力」があると同様、「しない力」があるから)