
「もう、100万回聞いたよ!」「100万回言ってもわからないー」
つい、こんな、大げさなセリフがでてきてしまったことはありませんか。
絵本『100万回生きた猫』より。
主人公の猫は、100万年、100万人の飼い主のもとで、100万回、死にます。
王様にはじまり、100万人の飼い主は、猫の死を悲しみましたが、猫は一度も悲しみませんでした。
猫は誰よりも自分のことが好きだったからです。
100万と1回目、猫は野良猫でした。100万回も死んだことを自慢しながら、猫は初めて、自分より大切と思う白猫に出会います。
幸せが訪れ、いつまでも共にいたいと願いますが、白猫は先に死にます。
猫は初めて、100万回、泣きます。そして、白い猫の隣で、死ぬのです。もう生き返ることはありませんでした。
100万回聞いても、1度も聞こえていなかったことば。100万回見ても、1度も見えていなかった世界。
100万回生きても、1度も実感がなかったいのち。
それが、たった1回で感じられる。自分以外の相手を大切に思うことです。
自分の役に立ってくれるから、自分の都合を満足させてくれるからではなく、じぶんが相手と共にあることが、大切に感じられる時、その1度が現れるのですね。
その時、「生きていること」の意味がわかってくる。
その時、「生きている」という実感が湧いてくる。
よろこびも、かなしみも、共に。
1回の縁に出会うこと。
チャンスは、無限にある。
相手に委ねるとき、現れる。
Life is in the moment.
出典・参照:佐野洋子『100万回生きた猫』