パブリックドメイン「世界の名画」ヴァン・ゴッホ

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは、1枚しか絵が売れない苦難を生きながら、精神性の高い絵画を描き続けたが、精神の病ゆえに、みずから命をたった偉大な画家。それが長い間、「定説」でした。

ゴッホは、900通を超える手紙を書きました。最近になり、この膨大な手紙や資料を研究し、綿密な取材を重ね、定説を覆す「ゴッホの死の真相」に迫った人がいます。美術史家・スティブン・ネイファーは『Van Gogh : The Life』で推理を詳述します。

「銃の知識ゼロのゴッホが、野原で突然、自腹を撃ち、歩いて1キロもある自宅に戻り、自分で医者を呼んだ。現場の絵の具はすべてなくなり、解剖も他殺の検証もなかった。手紙で明日への希望を語り、画材を注文したばかりの画家が、なぜ?

ゴッホは、彼をからかう少年2名と一緒にいたが、少年のひとりが持っていた整備不良の銃の銃弾を腹部に受けた。偏見に満ちた世界に生きながら、少年たちをかばうために、みずから人の罪を引き受け、命を落した。それがゴッホの死の真相である、と。」

かつて、小林秀雄はこう記しました。
「私は、ゴッホという人間に、先ず、彼の書簡集を通じて近づきました。私には、ゴッホの絵は、非常に精神的な絵と映ります。彼があえて「地上の絆以上のもの」と呼ぶものが、彼の心の内部に直覚されているのです。彼の手紙で率直に語られている、そういう経験が、主観的という言葉で片付けられるものとは、私には考えれられませぬ。私の実感から言えば、ゴッホの絵は、絵というよりも精神と感じられます。私が彼の絵を見るのではなく、向こうに眼があって、私が見られている様な感じを、私は持っております。」

絵にも、手紙にも、そのまま、心が映っている。

出典:小林秀雄『考えるヒント』「ゴッホの病気』
Steven Naifeh 『Van Gogh: The Life』