Be a doer.(する人になれ)
アメリカのある幼稚園の一風景です。
社会・経済的な背景が多岐にわたる家庭の、3歳から6歳までのこども150人を対象に、2つの実験をしました。
おもちゃで遊んでいる子供たちにむかって、先生が以下のことを伝えます。
・あそびを終わりにする
・おもちゃを箱にしまう
・床に散らばっているクレヨンをひろう
以下のように、先生から語りかけることばを変えると、こどもたちの行動はどうなるでしょうか?
A: Please help.「さあ、片づけましょう。みんなも手伝ってください。」
B: Please be helpers.「さあ、片付けましょう。みなさん、手伝う人になってください。」
興味深い結果が得られました。
Aのように語りかけた時、園児たちの大半は遊びをやめませんでした。
Bのように語りかけた時、園児たちの大半は遊びをやめて、片づけに参加しました。
実験をおこなったクリストファー・ブライアンさんは、こう言います。
「Helper(手伝う人)になってね」という名詞形で聞いた時、「手伝って」という動詞形の表現で聞いた時より、すぐ手伝う行動を取ったこどもたちが圧倒的に多かった。」
こどもたちは、A表現の意味を理解しなかったのではありません。
でも、おなじことを伝えようとしても、A表現は心に響かず、B表現は心に響いた、というのです。
ことばの表現の仕方で人間の行動が変わる。実は、これは小さい時から、大人になっても変わりません。
私たちはふだん、気づいていないけれども、自然にそうふるまっているのです。
なぜ「名詞形のほうが、動詞形よりも効果がある」のでしょうか?
それは、手伝う人ということばが人格 (Identity) に関わるからです。
ひとはよくありたい、という心を持っているから、そこにことばが響くのですね。
・Don’t cheat. というよりも、Don’t be a cheater.「ウソはつかないで」より「うそつきになるな」
・Please do. やってください。よりも、Please be a doer. 行動する人であれ。
修養は、身をもっておこない、心を養うこと。
習慣をつくることは、じぶんが変わるように、しむけること。
だからどうありたいか、ねがいの方向づけが大切です。
じぶんは「どのようなおこない」をする人になりたいか、を表すことばがその方向づけになります。
ひとこと、じぶんにむけて声にすることばを、じぶんで聞くこと。
なりたいじぶんを表すことばを繰り返すことです。
それが、着実な習慣づくりのエッセンスです。
3歳の時から、私たちはそのようにしてきているのですから。
Be a practitioner.(実践者であれ)
出典・参照:Dana Suskind 『Thirty Million Words』
Christopher J. Bryan, University of California, San Diego. “Want a young child to ‘help’ or ‘be a helper’? Choice of words matters.” ScienceDaily. ScienceDaily, 30 April 2014.