Empathemian『以心伝心、不立文字』

Connect your heart.(以心伝心)

立考:不立文字と似たことばに「以心伝心」があります。
大和:はい、対になることばです。(*注1)
立:心によって心を伝える、とは?:辞書にはこうあります。

「ことばに言い表せない仏法の真髄を師の心から弟子の心へと伝えてきたこと。転じて、一般に文字やことばを使わずに互いの心と心で通じ合うこと。」

大:不立文字と同じく、依存から離れるためにです。
立:確かに、出典の箇所を見ると、執着を破るために、とあります。
大:そうです。
立:一般的には、何も言わないでも心が通じ合う間柄。そんな文脈で使われますね。
大:ええ。ふだんから心を通わせている、ということですね。
立:何の共通点もない人の間で、突然心が通じ合うということはないですから。
大:ことばでも伝えるけれど、依存しすぎないことです。
立:行為が伴わないと、以心伝心にならない。
大:おなじ環境、おなじ心、おなじ行為を共有することです。
立:おなじ修行、つまりプラクティスをする人同士。
大:そうです。本来、そこから来ていますから。

縁乃路, 『Stay engaged』

Communication makes you learn.(通じあうから学べる)

立:私たちは、ふだん、ことばがあり、それを使ってコミュニケーションができる、と考えていますよね。
大:そうですね。後からそのように思うだけです。心が先です。
立:英語のプラクティスをすると、実はそうではないことに気づくはずです。
大:というと?
立:文字で読めばわかるかんたんなセリフが聞き取れないことです。
大:なるほど。文字に依存して単語を覚えたけれど、音でやりとりは練習していないから。
立:よく知っているやさしい単語からなる会話が聞き取れないわけです。
大:脳内に何千語も単語の在庫がある。倉庫が大きすぎて取り出せないのでしょうか?
立:話は逆なんですね。
大:文字でことばを知っているから、コミュニケーションができるのではない、と。
立:そうです。音でコミュニケーションするから、ことばを使える、使えるようになるのです。
大:コミュニケーションの場、つまり心があって、そこで身につけるわけですね。
立:その通りです。脳内に文字の在庫があるはずはないですし。
大:記憶のイメージから、ことばが頭の中に貯蔵されているかのような想像をするだけですね。
立:聞いて、話す。話して、聞く。
大:コミュニケーションの環境があって、ことばが紡ぎ出される。
立:はい、言語は、リズムにのせた音で発話をやりとりするという運動行為です。
大:ことばなしでも通じるというより、以心伝心の中に、ことばがあるということでしょう。
立:そうすると、その場にいなくても、想像でつながれます。

Empathemian, 『Be purposeful』

Connect yourself with others.(じぶんからつながれ)

大:禅と英語学習にこんな結びつきがあるとは。
立:従来の英語教育は「英語は読んで意味がわかればよい、文を作成できればよい」が中心でした。
大:そうですね。
立:「単語をつなげれば文がつくれる」といったイメージがあります。
大:それも、話が逆だというのですか?
立:その通りです。音でセリフを出し入れできるから、単語も捉えられるといったほうがよいです。
大:読み書きがこなせるなら、すばらしいことですが。
立:もちろん。ただし、そこへ行き着くまでに苦行がありますよ。
大:確かに。文字に頼る学習だけだと限界があるわけですね。
立:はい、母語ではありえない特殊な過程ですから。
大:目的とすることが一致していないということになりますね。
立:心を通じ合わせることが目標です。
大:そのためには、不立文字の心得も有効だという話でした。
立:文字がいけないのではありません。音やリズムを大切にすることなんですね。
大:すると、やはり、文字依存が妨げになりますね。気づかぬうちに。
立:そうです。よかれと思っていることが、反プラクティスになっちゃう。
大:仏典はあっても、お経が重要なのと同じですね。
立:人の書いたものをわかる、というだけでよい、という考えだと、身につかないです。
大:じぶんから声をかける。相手の心にふれる。
立:心のあるところで、ことばを身につけるだと思います。
大:以心伝心があって、ことば。

出典・参照:禅源諸詮集都序、英語トレイル、以下のエンパレットなど

(*注1)『禅源諸詮集都序』に、故但以心傳心不立文字。こうあります。達摩が法を受けて天竺(インド)から中華(中国)へ自ら赴き、伝えようとしてこと。「ただ心によって心を伝え、文字を立てない。執着を破ること。」

禅と言語習得 ① 只管打坐(なりきる真意)

禅と言語習得 ② 不立文字(文字依存が機会を奪う)

英語の「音を聞き取り、音で伝えられる」

じぶんから友になれ

明るいところにカギはない(教えて依存症ですよ!)