Empathemian『I Goat It!』

I think in picture. (わたしは絵で考えている)

テンプル・グランディンさんは、ことばじゃなくて、絵で考える人。
自閉症をもつ動物行動学者として広く知られています。

テンプルさんは、自閉症が動物の感覚に似たセンスを備えていることに気づき、その発見を原点に、動物の感覚と行動を研究しています。(注1)

日本語では「自閉症」という名称が普及していますが、Autism(じぶん内部で完結した精神状態)から来ています。

英語の日常会話では、Spectrum(スペクトラム)といったことばがよく使われます。(*注2)
障害といっても、ひとことで言いあらわせない幅の広さがあるからです。

テンプルさんは、こう言います。

「人間は見ると予測しているものを見るようにつくられていて、見たことのないものを見ると予測するのは困難だ。新しいものはなかなか頭に入らない。でも、動物と自閉症の人はふつうの人とちがう。私たちが望んでも望まなくても、注意を奪う。」

・動物の場合、前頭葉が小さく、発達していない
・スペクトラムの場合、前頭葉が本来の機能を十分に発揮していない

Empathemian, Piquetti Trail

I am different, not less. (劣っているのではなく、人とちがうセンスをもっている)

コミュニケーションに障害がある?
それは、周りの人との一般的なやりとりに期待される機能がちがっている、という意味ですね。
一方、動物のセンスを備えているから、ふつうの人とちがう能力が発揮できます。
(動物とひとことで言いますが、もちろん、千差万別です)

テンプルさんは、言います。

(1)動物と人間は、もっている脳が異なり、世界をちがったふうに体験する
(2)動物と人間には、共通点がおどろくほど、たくさんある

おなじ人間でも、備えもったセンスはいろいろ。
おなじじぶんでも、その場、その時々によって心持ちも変わります。

ということは、心持ちを少し変えることで、気づくことがあるはず。
ささやかだけれど、身近なところにも、動物のセンスが発揮されています。

たとえば、こんな時。
「冷蔵庫の牛乳。すこし古くなっている?」
そんな時、製造日や賞味期限を見たりしますね。

でも、最終的には?
「うーん、なんか匂いがヘンだから、やめておこう。」

嗅覚は、感覚の進化の歴史で、最も古くからあるセンスです。
動物のココロを残していて、頭やことばで考えるはずの私たちも、いざという時、そちらを優先します。

「動物と人間」というふうに、わけるのがあたりまえになっているだけ。

動物のココロを持っている[ふりかえるから気づく]へつづく

出典・参照:Temple Grandin 『Animals In Translation』、テンプル・グランディン『動物感覚』

Temple Grandin 『The Austistic Brain』

テンプルさんのTED講演(YouTube)TED We world needs all kinds of minds

(*注1)オリヴァ・サックス『火星の人類学者』は、テンプルさんがじぶんを表現したことばをタイトルにしています。人とちがう能力の持ち主。

(*注2)Autism Spectrum Disorder(ASD)

共に食べている [じぶんを見る目が変われば世界は変わる]

アメンボで想像のプラクティス①