人間のことばの起源について、ダーウィンは、テナガザルのうたのようなものだという仮説を立てました。はく息で声をつくり、それをことばにする身体運動に先立って、手でものおとを立てていた、ジェスチャーがあったとする仮説もあります。(注1)
いずれにせよ、人間の言語は、ことばを音の連なりとして知覚するところから出発します。聞き入れる音を区切り、時間軸にそった特定のパターンとして捉えることで、記憶します。歌を覚えることとおなじように、言語中枢の情報処理は、音楽的なのです。
どんな自然言語でも、限りのある種類を組み合わせることによって、無限のパターンをつくりだすことができます。言語の生成には、息づかいから、アゴ、舌、くちびる、ノド奥、全身を自在に動かせることが必須の条件です。
身体運動によってこそ、言語は存在するのです。一歩踏み込んで言うと、音を聞いて認識する「感覚の言語中枢」と、声を発してことばにする「運動の言語中枢」がいっしょに働くことです。
後者の運動機能が損なわれて、「声のきこえないことば」にもなります。
英プラの配信でお送りしている映像コンテンツ「miniプラ」では、「声ことばの鏡」を提供しています。
音節ごとに色づけされた粒がならび、声のセリフを映し出すのです。エンパシームにふくまれた、ことばのタネ(Seed)を、音楽の楽譜のように写すのです。それを、円符(Emp)と呼びます。
音声の科学は、音の要素をデータにして表現するという手法を50年あまり、発展させてきました。音の波形や声紋のグラフなどを、見たことがあるのではないでしょうか。でも、それらは専門的に分析するツールなので、私たちがふだんの発声、プラクティスにつかうというわけにはいきませんでした。
声のセリフの鏡にして、じぶんの声、相手の声をうつしみることができたらどうでしょう。人間に備わった力、言語の能力、直感の力、共感の力で、それを活かすことができます。学習の目的はもちろん、じぶんをふりかえること、心をわかちあうことにも活かせます。
私たちはふだん、話すことと聞くことを、わけて考えていますね。でも、話すことは、同時にじぶんの声を聞くことでもあります。人のことばを聞くときは、その発声をなぞらえ、想像することでもあります。
鏡なしにじぶんの姿、表情が見えないように、声のふるまいも、見ることはできません。聞くことと見ることがいっしょにおさまった、声の鏡。
エンパシームの場にゆだねて、ひと言、声に出すだけで、円符がカプセルのなかにおさまり、それを目ではっきり確かめることができます。
声を見えるようにする波形グラフや声紋グラフではなく、くっきりと輪郭をなぞり、区切れや強弱がはっきりに気づくことができます。
たとえば、「英プラ」でのフィードバックアドバイスの例。
英語は、強弱のリズムをもって話す言語。弱く、短く、速いまとまりが、プラクティスのツボです。弱く短いところを長くしてしまう、日本語のカナモジリズムで発すると大きくリズムが崩れ、セリフが長くなるとひと息で(つっかえずに)言えなくなります。すべての文字をおなじように音読する習慣、簡単な単語だと思っていることば。それらが「つっかえ」の原因となります。じぶんで声セリフにできないことばは、なかなか聞き取れるようにもなりません。そのための「気づく」プラクティスがいるのです。円符は、0.1秒ほどの単位の世界を、端的に、ひと目でわかるように表現します。
出典・参照:『英プラをくわしく知ろう』「⑤言語と音声のサイエンス)」、英語トレイル「miniプラ」ライブラリー
『英プラガイド② 円符のリズム』(2020)、SomniQ Patented Invention-Graphical Visualization of Speech(2023)
(*注1)「ふれあいそのものが、ことばだった。」
Empatheme Data Collection Method and Applications of English Learner Data(2023)