Empathemian 『ポピーの花が電子に見える』

目に見えない世界。

想像とは、見えるものを介して、見ようとすることです。見えるかのようなふりをすることです。あたかも見えているような、その気になって、じぶんと結びつけることです。フリをするというと、なにかの演技のように聞こえるかもしれませんが、実は、想像するというのは、絵を描くように、演じていることなのです。

Imagine (想像する)ということばも、真似をする、ふりをするという意味と同じ語源のことばです。脳の仕事は、「演じる仕事」をすることです。でも、脳だけではありません。環境の中で物事とふれあい、相互作用が生まれる時、そのフリができるのです。

その時に使われる道具が、アナロジーです。アナロジーとは、「似ているもの、共通するもの」をみつけて、結びつけることです。その時に使うコンセプト、ことばを、メタファと呼びます。作文で何かを表現する時の「比喩」のことだけでなく、人間の想像の営みは、メタファが運び役になります。何かに見立てることで、わかりやすくなるのです。

たとえば、電気は電子の「つぶ」のようなもの。電流は、その「つぶ」の流れ。誰も見たことがないので、みんなで「つぶ」という、同じメタファを使うことで、そのイメージが定着し、話がやさしくなります。

ところで、電子は銅線の中を移動しますが、そのスピードはカタツムリのように遅いということをご存知ですか?あれ?光の速さじゃないの?だって、スイッチいれると同時に電気つくけど。実は、電流のエネルギーは電線の外を伝わるのです。電流が流れると、電線の周囲の空間には「電界」と「磁界」ができます。

じぶんが電気のつぶのひとつとして路を進む時、その路の周りに世界ができ、そこで伝わるのです。
この話、「ことばよりも、まわりの雰囲気、空気で伝わる」という話と似ていますね。そう、みな、メタファです。

つぶのメタファ。

空気のメタファ。

流れのメタファ。


出典:『毎プラガイド』