Empathemian『心臓のレジリエンス』

Every day is a gift.(毎日が贈り物)

数日前からの予感は的中した。病院から電話があった。

駆けつけると、主治医が母の容態と救急処置の経緯を説明してくれた。肺炎で呼吸が止まり、ステロイドや抗生物質、酸素吸入、点滴などの処置をした、という。

「もうダメかなと思いました。呼吸が止まっていましたから。でも、処置はうまくいったので、あとは身体が持ちこたえられるかどうか。」

そう言って、レントゲン写真を見せてくれた。大きく肥大した心臓が写っている。(*注1)

母は95歳。10年前、心臓手術で臨死を体験した。
だから、文字どおり、一日一日が天からの贈り物である。

Every day is a gift.

母は、毎日このことばを声に出すことにした。私たち家族もおなじことばを言う。そうすることで、10年だって生きられるかもしれない。

そして、本当に10年がたった。

エンパレット『たましいの夢』Every day is a gift.

救急処置の後、母は三日間、眠り続けた。

三日後、母が薄目を開けた。兄と私は、この三日間に何が起きたのか、呼吸が止まったこと、先生が救急処置をしてくれたことなどを、ひとつずつ話して聞かせた。

母は目を開け、じっと聞いている。ぎゅっと手を握る力もしっかりしている。

意識が戻ったことを確かめてから、エンパレット『たましいの夢』と、ホームページに掲載したエンパレットカード『毎日、ひとことのねがい』を見せ、聴かせた。

母は一枚ずつ、じっくりと聴き、うなずいた。

その中に、10年前に録音した母自身の肉声がある。

毎日に感謝(Every day is a gift.)

Every day is a gift.(毎日に感謝)

今、声は出ない。けれども、その口元は「Every day」と言っている。

2016年当時、私たちが開発していた「アボット」(Empathetic Computer) で、母が声にしたことば。(*注2)

これが、エンパシームの最初のシード(ことばのタネ)だった。

母とお互い、毎日声にする約束を交わした。

エンパシームは、第五世代のアプリを中心としたプラクティスのプラットフォームとなり、母の肉声もその上で響く、一枚のエンパレットカードになった。

ごく個人的な、一家族のささやかエピソードにすぎない。けれども、だれにとっても、心に響いたひとことが、かけがえのない「タカラ」になる。その思いは変わらない。

母にそっと背中を押されて10年、ようやく、ここまでたどりついた。

一枚のカードを楽しむところから、プラクティスでタネを育て、それが「タカラ」に変わるまでにはトレイルがいる。

ことばに出会い、声にして、くり返し、じぶんの中に育てる。そうして身についたことばが、じぶんをつくっていく。

Your voice shapes who you are.(声がじぶんをつくる)

作(文・挿絵・声に出すことば:坂口立考、声(立考、和子、璃宇)
出典・参照:エンパレット『毎日、ひと言のねがい』

(*注1) 心臓の不思議について、以下のエンパレットノートに。

(*注2) アボット(Empathetic Computer)は、エンパシームアプリの前進であり、未来のコンピュータ。

https://ja.empatheme.org/invention/