じぶんの声ことばにふれる喜び

「私が音声の研究は始めたのは昭和29年です。当時、音声という大気の波の複合体を、波長の違いに従って分析する機械は日本にはありませんでした。その後、ソノグラフというアメリカ製の音声分析機械が3台日本に輸入され、そのうちの1台が日本電信電話公社(NTTの全身)の研究所に備え付けられました。それが音声研究という分野の誕生です。

その音声研究の誕生と揺籃期に、私は独占的にその機械を使わせてもらい、一人で、こうだ、ああだ、と面白がって過ごしていました。研究のスタートから、私に何かを教えてくれる先生も、専門家も、先輩もいませんでした。何から何まで自分で試して発見して、理解していかなければなりませんでした。それは私の人生に大きな影響を与えました。素晴らしい先生に師事することは貴重なことですが、先生がいないということもまた、なかなかよいことだと思っています。」